印刷業界における切りしろ指定とは?
印刷業界における「切りしろ指定」(ふりがな:きりしろしてい、英:Bleed Setting、仏:Réglage de Fond Perdu)とは、印刷物を裁断する際に余白部分をあらかじめ設け、デザインが端まで美しく仕上がるように設定することです。切りしろ指定は、裁断時の微細なズレを考慮し、印刷データの縁に3〜5mm程度の余白を追加することで、仕上がりで不要な白枠が出ないようにします。ポスター、パンフレット、名刺などで頻繁に用いられ、印刷物の完成度を高める重要な工程です。
切りしろ指定の概要
切りしろ指定は、印刷物の仕上がりの品質を高めるために行われる工程で、裁断の際に生じるズレを考慮してデザインの周囲に余白を設ける方法です。この余白部分は「切りしろ」や「塗り足し」とも呼ばれ、通常は3〜5mm程度追加されます。これにより、裁断位置がわずかにズレてもデザインの一部が欠けることなく、印刷物が端まで美しく仕上がるようにしています。
切りしろ指定は、パンフレット、ポスター、名刺、カタログなど、裁断が必要な印刷物では不可欠な要素です。特に、背景色や写真がページの端まで広がるデザインでは、切りしろがあることで見栄えの良い仕上がりが保証されます。また、文字やロゴなどの重要な要素は、裁断の影響を避けるために切りしろ内に配置せず、内側の安全余白に収めることが一般的です。
切りしろ指定の歴史と背景
切りしろ指定の概念は、印刷物の量産が始まった19世紀に、裁断工程の精度を高めるために生まれました。初期の印刷機は現在ほどの精密な裁断ができず、手作業による裁断や誤差が発生しやすかったため、切りしろが必要とされました。このようにして切りしろを設けることで、裁断による見た目のズレを補正し、印刷物の仕上がり品質が向上しました。
20世紀に入り、オフセット印刷の普及により、精密な裁断が可能になりましたが、微細なズレは依然として発生するため、切りしろ指定は重要な工程として継続されました。また、DTP(デスクトップパブリッシング)が普及した1980年代以降は、デジタルデータ上で切りしろが設定できるようになり、印刷工程の一部として切りしろ指定が標準化されました。
現代における切りしろ指定の役割と重要性
現代の印刷業界では、切りしろ指定は高品質な印刷物を提供するための重要な工程とされています。切りしろ指定によって、デザインが裁断位置に依存せず、端まで綺麗に印刷されるため、特に広告やポスターのように視覚的インパクトが求められる印刷物では重要な要素です。適切な切りしろ指定が行われていると、裁断のズレによるデザインの欠けや、仕上がりに白い余白ができるリスクを防げます。
また、印刷会社やデザイナーにとっても、切りしろ指定はスムーズな印刷プロセスを支える重要な役割を果たしています。事前に正確な切りしろが設定されていれば、印刷後の裁断工程が効率化され、品質の安定した製品を短期間で提供できるため、コスト削減にも寄与します。
切りしろ指定を行う際の注意点
切りしろ指定を行う際には、余白の幅を正確に設定することが重要です。通常は3〜5mmが推奨されていますが、印刷物のサイズや仕上がりの用途によって適切な幅を調整することもあります。また、切りしろ部分には文字やロゴなどの重要な情報を配置せず、デザインや背景色のみを広げるように設定します。
さらに、切りしろ指定はデザインソフト上で行い、データを印刷会社に入稿する際には、切りしろが適切に設定されているか事前に確認することが大切です。印刷物によっては、印刷会社からの指定で特定の切りしろ幅が求められる場合もあるため、仕様に従って切りしろを調整することが求められます。
まとめ
切りしろ指定は、印刷物が裁断された際にデザインが端まで美しく仕上がるための大切な工程です。歴史的には裁断の精度向上のために始まり、現在も印刷品質の維持や効率的な生産に欠かせません。切りしろを適切に設定することで、裁断のズレによる見た目の問題を防ぎ、視覚的に一貫した印刷物が完成します。今後も切りしろ指定は、印刷業界での品質管理の基礎として重要な役割を果たし続けるでしょう。