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印刷業界におけるコロナ放電とは?

印刷業界における コロナ放電(ころなほうでん、Corona Discharge / Décharge Corona)とは、高電圧を利用して空気中にプラズマを発生させ、素材表面の特性を改良する技術を指します。特にプラスチックフィルムや非吸収性の素材に対し、印刷インクの密着性を向上させるために使用されます。コロナ放電は、包装材料や特殊印刷など、幅広い分野で欠かせない技術です。



コロナ放電の歴史と言葉の由来

コロナ放電という概念は、19世紀に電気の挙動を研究する中で発見されました。この現象は、電気が高電圧下で空気を介して流れる際に、光の輪(コロナ)が発生することからその名がつけられました。

印刷業界での応用は、20世紀半ばに始まりました。プラスチックフィルムの普及に伴い、表面にインクや接着剤が付きにくいという課題が浮上しました。これに対し、コロナ放電技術が素材表面のエネルギーを高め、印刷適性を向上させる解決策として採用されました。

コロナ放電の仕組み

コロナ放電は、高電圧を印加した電極と接地された対向電極の間で発生します。この間に空気が通ると、電気が空気分子を電離させ、プラズマが形成されます。このプラズマが素材表面に作用し、以下の効果をもたらします:

  • 表面エネルギーの向上:素材表面のエネルギーを増加させ、インクや接着剤の密着性を向上。
  • 親水性の付与:表面を親水化し、液体の広がりやすさを改善。
  • 化学的改質:表面分子構造を変化させ、接着性を強化。

コロナ放電の用途と印刷業界での使われ方

コロナ放電は、特に以下のような素材や用途で利用されています:

  • プラスチックフィルム:ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの表面処理に使用。
  • 包装材の印刷:食品パッケージやラベル印刷でインク密着性を向上。
  • 特殊印刷:UV印刷やデジタル印刷で、素材特性に応じた表面改質を実現。

例えば、食品パッケージの製造では、ポリプロピレンフィルムにコロナ放電処理を施すことで、印刷インクが剥がれにくくなり、製品の美観と品質が向上します。また、広告や展示用の大判印刷でも使用され、非吸収性素材への鮮やかな印刷を可能にしています。

コロナ放電のメリットと課題

コロナ放電の主なメリットは以下の通りです:

  • 印刷品質の向上:素材表面の特性を最適化し、高精細で耐久性のある印刷を実現。
  • 幅広い適用範囲:プラスチック、金属、ガラスなど多様な素材に対応。
  • コスト効率:簡便な処理で高い効果を得られる。

一方で、以下の課題も存在します:

  • 処理の限界:素材によっては十分な効果が得られない場合がある。
  • 設備コスト:高電圧を使用する装置の導入には初期投資が必要。
  • 安全性の確保:高電圧を扱うため、安全対策が不可欠。

コロナ放電の未来と展望

コロナ放電技術は、今後さらに進化すると期待されています。特に、環境に優しい素材の開発やリサイクル可能な包装材の需要増加に伴い、より効率的で安全性の高いコロナ放電装置が求められています。また、AIやIoTを活用した処理プロセスの自動化により、品質管理がさらに向上するでしょう。

これにより、コロナ放電は印刷業界だけでなく、製造業全般においても重要な技術として、その役割を拡大していくことが予想されます。

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