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印刷業界における乾性油とは?

印刷業界における乾性油(かんせいゆ、Drying Oil / Huile Siccative)とは、酸素と反応して硬化する性質を持つ植物性油の一種で、主に印刷インキの原料として使用されます。この油は、空気中の酸素と化学反応を起こすことで硬化し、インキが紙や印刷物の表面に定着するのを助けます。乾性油は、印刷工程において速乾性や安定性を提供する重要な材料として、現在でも広く利用されています。


乾性油の歴史と由来

乾性油の使用は、古代からその特性が知られており、油絵の顔料や接着剤としても利用されていました。特に亜麻仁油(リネンオイル)は、速乾性と硬化性を持つことで知られ、ルネサンス期には絵画や工芸で広く使われました。

印刷業界において乾性油が注目され始めたのは、19世紀にインキの品質向上が求められるようになった時期です。当時の活版印刷では、インキの乾燥時間が生産性に直接影響するため、乾燥が早く耐久性に優れた乾性油が採用されるようになりました。その後、亜麻仁油や桐油、ポピーシードオイルなど、さまざまな植物性乾性油が印刷用インキの基材として使用されるようになりました。


乾性油の特性と種類

乾性油の主な特性は以下の通りです:

  • 酸化重合性:空気中の酸素と反応して硬化し、表面を乾燥させる。
  • 光沢性:インキに光沢を与え、仕上がりを美しくする。
  • 速乾性:印刷物の乾燥を速め、生産効率を向上させる。
  • 安定性:インキの成分と混ざりやすく、均一な乾燥を実現する。

乾性油には以下のような種類があります:

  • 亜麻仁油:最も一般的な乾性油で、速乾性と光沢性に優れる。
  • 桐油:耐久性が高く、防水性を持つ乾性油。
  • ポピーシードオイル:色が透明で、絵画や特殊用途に使用されることが多い。

乾性油の印刷業界での用途

乾性油は、印刷業界で以下のような用途で活用されています:

  • インキの製造:油性インキの主成分として、顔料や樹脂を結合し、乾燥を促進。
  • 印刷プロセスオフセット印刷や活版印刷で、速乾性の特性が求められる場面に使用。
  • 特殊印刷:アートブックや高級印刷物の仕上がりを高めるために使用。

これらの用途において、乾性油は印刷物の品質向上や作業効率の向上に大きく貢献しています。


乾性油の課題と改善策

乾性油の使用には以下のような課題があります:

  • 環境負荷:一部の乾性油は酸化プロセスで揮発性有機化合物(VOC)を放出する。
  • 安定性の制約:温度や湿度の影響で乾燥時間が変化することがある。
  • 原材料の価格:天然素材の価格変動が製造コストに影響する。

これらの課題に対処するため、以下の改善策が進められています:

  • VOC排出を抑える合成乾性油の開発。
  • 乾燥プロセスを制御する添加剤の使用。
  • 持続可能な農業で生産された原材料の採用。

乾性油の未来と展望

今後、乾性油は環境への配慮を強化しながら、持続可能な形で利用されていくと考えられます。バイオベースの乾性油や、リサイクル可能なインキとの組み合わせが進むことで、印刷業界全体のエコフレンドリー化に寄与するでしょう。

また、乾燥時間をさらに短縮できる新しい乾性油や、高精細印刷に対応した改良型油の開発が期待されています。これにより、乾性油は印刷業界において引き続き重要な役割を果たしながら進化を続けるでしょう。

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