印刷業界におけるくわえとは？
印刷業界におけるくわえ（ふりがな：くわえ、英：Gripper Margin、仏：Marge de Préhension）とは、印刷機において用紙を保持して搬送するために必要な余白部分を指します。このくわえ部分は、実際に印刷されない領域で、印刷物の端から一定の幅を確保して設けられます。くわえの設定は、用紙の搬送や印刷の精度に影響するため、印刷業界では重要な要素となっています。
くわえの概要
くわえとは、印刷機が用紙をしっかりと保持して搬送するために設けられる余白のことです。この部分は、用紙の端にあり、印刷工程中に印刷機のグリッパーと呼ばれる装置が用紙を挟むことで、正確に用紙を送り出します。くわえ部分にはインクが乗らないため、最終的な印刷物には含まれません。
- 用紙の安定搬送：くわえ部分を設けることで、印刷中に用紙がずれることなく安定して搬送されます。
- 印刷精度の向上：くわえを正しく設定することで、印刷位置のズレを防ぎ、高精度な印刷が可能となります。
- 裁断後の仕上がり：印刷後、くわえ部分は裁断されるため、仕上がりには影響しませんが、印刷の安定性を支えます。
くわえの歴史と由来
「くわえ」という用語は、印刷機が用紙を「くわえる」ように保持する動作から名付けられました。19世紀の活版印刷機では、用紙を手動でセットする必要があり、印刷時に用紙がずれないようにするための工夫が求められていました。そこで、用紙の端をしっかりと保持して搬送するための装置が開発され、その保持部分を「くわえ」と呼ぶようになりました。
印刷技術の進化とともに、手動から自動化された印刷機が登場し、くわえの重要性はさらに高まりました。特に、オフセット印刷が普及した20世紀には、くわえ部分の設定が印刷の品質や生産性に直結するようになりました。現在では、デジタル印刷機でもくわえの概念が取り入れられ、安定した用紙搬送が求められています。
現在のくわえの使われ方
現代の印刷業界では、くわえは以下のような用途で広く使用されています：
- オフセット印刷：商業印刷物（パンフレット、ポスター、カタログなど）の大量印刷において、くわえの設定が正確な印刷を実現します。
- デジタル印刷：オンデマンド印刷や短納期の印刷物でも、用紙の安定搬送のためにくわえが必要です。
- 特殊印刷：名刺や高級パンフレットなどの裁断精度が求められる印刷物では、くわえ部分が特に重要です。
- 製本工程：くわえ部分は印刷後の製本工程でも活用され、裁断や仕上げ作業の際に利用されます。
くわえの利点と注意点
くわえを正しく設定することで、以下の利点があります：
- 印刷の安定性：用紙が安定して搬送されるため、色ズレや印刷ムラを防止します。
- 高精度な仕上がり：裁断前の余白を確保することで、仕上がりの精度が向上します。
- 効率的な生産：くわえの設定が適切であれば、印刷のスピードと効率が向上し、生産性が上がります。
一方、以下の注意点も考慮する必要があります：
- 用紙の無駄：くわえ部分は印刷後に裁断されるため、使用しない紙の部分が発生します。環境に配慮した用紙の管理が必要です。
- 設定ミス：くわえの設定が不適切だと、印刷位置がずれて仕上がりに影響を及ぼすことがあります。
- 機械のメンテナンス：グリッパーの摩耗や不具合が発生すると、用紙搬送が不安定になり、印刷品質が低下します。
まとめ
くわえは、印刷業界において高品質な印刷を実現するための重要な要素です。その歴史は19世紀に遡り、現代ではデジタル印刷にも応用されています。正確なくわえの設定により、用紙の安定搬送が可能となり、印刷の精度が向上します。今後も、印刷技術の進化に伴い、くわえの設定や管理がさらに重要な役割を果たすことが期待されています。
