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印刷業界における湿し水とは?

印刷業界における 湿し水(しめしみず、Fountain Solution / Solution de Mouillage)とは、オフセット印刷で使用される液体で、印刷プレートの非画線部(インクが付かない部分)を湿らせる役割を果たします。この液体は、水を主成分とし、アルコールや酸性調整剤などが含まれることで、インクの転写性や印刷品質を向上させます。湿し水は、インクのにじみ防止や均一な印刷を実現するために不可欠な要素です。



湿し水の歴史と背景

湿し水の起源は、オフセット印刷技術の発展と深く関連しています。オフセット印刷は20世紀初頭に開発され、リトグラフ技術を改良して商業印刷に適用したものです。この技術では、水と油が反発する性質を利用して、印刷プレート上でインクが付く部分と付かない部分を制御します。

湿し水が印刷工程に導入されたのは、非画線部にインクが付着する「汚れ」を防ぐためでした。当初は単純な水が使用されていましたが、印刷速度の向上や品質要求の高まりに応じて、pH調整剤やアルコールなどの添加物が含まれるようになりました。これにより、湿し水の性能が向上し、近代的なオフセット印刷の基盤が築かれました。

湿し水の役割と現在の使われ方

湿し水は、印刷プロセスにおいて以下のような重要な役割を果たします:

  • 非画線部の保護:水と油の反発を利用し、非画線部にインクが付着しないようにする。
  • 印刷プレートの冷却:高速印刷時に発生する摩擦熱を抑える役割を持つ。
  • インクの転写性向上:インクが紙に均一に転写されるようサポートする。
  • 印刷品質の安定化:インクのにじみや色ムラを防ぎ、クリアな印刷を実現する。

現在では、湿し水は単なる水ではなく、以下の成分を含む特別な溶液として利用されています:

  • pH調整剤:湿し水の酸性度を適切に保つために使用。
  • 界面活性剤:水の浸透性を向上させ、均一な分布を可能にする。
  • アルコールまたはアルコール代替品:表面張力を低下させ、非画線部への水分供給を安定化。
  • 防腐剤:細菌やカビの繁殖を防ぎ、湿し水の品質を維持。

例えば、現代の高速オフセット印刷機では、湿し水供給システムが自動化されており、印刷速度や環境条件に応じて湿し水の量や成分が最適化されます。これにより、品質管理がより効率的に行われています。

湿し水のメリット

湿し水の適切な使用により、以下のようなメリットが得られます:

  • 高品質な印刷:インクのムラやにじみを防ぎ、クリアで鮮明な印刷が可能。
  • 効率的な印刷工程:非画線部の汚れを防ぎ、作業時間やコストを削減。
  • 印刷機の保護:プレートやブランケットの摩耗を抑え、機器の寿命を延ばす。
  • 環境負荷の軽減:近年では、アルコールを使用しない「ノンアルコール湿し水」も開発され、環境に配慮した印刷が可能。

湿し水の課題と今後の展望

湿し水には多くのメリットがありますが、以下のような課題も存在します:

  • 管理の難しさ:湿し水のpHや濃度を適切に維持しないと、印刷品質に影響を与える。
  • 環境負荷:従来の湿し水に含まれるアルコールは揮発性有機化合物(VOC)を発生させ、環境に悪影響を及ぼす可能性。
  • 設備のコスト:湿し水供給システムの導入や維持管理にコストがかかる。

これらの課題を解決するために、現在では以下のような技術が進化しています:

  • 環境負荷を低減するノンアルコール湿し水の普及。
  • 自動制御システムによる湿し水の濃度管理の最適化。
  • バイオ由来の添加剤を活用した湿し水の開発。

湿し水は、オフセット印刷の品質を左右する重要な要素であり、今後も環境や効率性を重視した改良が進むと考えられます。印刷業界の技術革新に伴い、湿し水の役割もますます重要となるでしょう。

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