印刷業界における水性インキとは？
印刷業界における「水性インキ」（ふりがな：すいせいいんき、英：Water-Based Ink、仏：Encre à Base d'Eau）とは、水を主成分とした溶媒を使用するインキを指します。従来の溶剤系インキに比べて環境負荷が低く、安全性が高いため、特に食品パッケージや子ども向け印刷物などの分野で広く使用されています。水性インキは揮発性有機化合物（VOC）の排出が少なく、持続可能な印刷を目指す業界で注目されています。
水性インキの概要
水性インキは、インキの溶媒として水を使用し、顔料や樹脂、添加剤を適切に配合して製造されます。このインキは以下のような特徴を持っています：
- 環境に優しい：溶剤系インキと比較して、VOCの排出が大幅に抑えられます。
- 安全性が高い：人体に有害な溶剤を含まないため、食品や医薬品のパッケージ印刷に適しています。
- 色彩の再現性：近年の技術進化により、鮮やかな色表現が可能になっています。
- 速乾性：特定の用途では乾燥工程が必要ですが、適切な条件下で速やかに乾燥します。
水性インキは、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷など、さまざまな印刷方式で利用されています。
水性インキの歴史と由来
水性インキの開発は、20世紀後半の環境問題への関心の高まりとともに始まりました。それまで主流だった溶剤系インキは、VOC排出や作業者への健康被害が問題視されていました。
1970年代に入り、環境規制が厳格化される中で、水性インキの研究が進展しました。当初は印刷適性や発色に限界がありましたが、1980年代以降、樹脂や顔料の改良によって性能が向上し、商業印刷でも使用されるようになりました。
現在では、食品パッケージ、紙袋、ラベル印刷などの分野で水性インキが広く採用されています。また、デジタル印刷の普及に伴い、水性インクジェットインキも高性能化し、多用途で利用されています。
現在の水性インキの使われ方
水性インキは以下のような分野で使用されています：
- 食品包装：食品と直接接触する可能性のあるパッケージでは、安全性が求められるため水性インキが採用されています。
- 子ども向け製品：絵本やおもちゃのパッケージなど、子どもが触れる製品に適しています。
- 紙袋や段ボール：環境に配慮した包装材として、水性インキが使われています。
- デジタル印刷：インクジェット方式で使用される水性インキは、高速かつ高解像度の印刷に対応しています。
また、自治体や企業の取り組みとして、環境負荷を低減する目的で水性インキへの切り替えが進んでいます。
水性インキの利点と注意点
水性インキを使用することで、以下の利点が得られます：
- 環境負荷の低減：VOCの排出が少なく、持続可能な印刷が可能です。
- 作業環境の改善：有害物質を含まないため、印刷現場での安全性が向上します。
- 幅広い用途：食品パッケージやデジタル印刷など、さまざまな分野で活用できます。
一方で、以下の注意点もあります：
- 乾燥条件の管理：水性インキは乾燥に時間がかかる場合があり、適切な乾燥設備が必要です。
- 適用範囲の制限：特殊な素材や高い耐久性が求められる用途には、溶剤系インキが適している場合があります。
- コスト：一部の用途では、専用の設備や技術が必要となり、初期コストが高くなることがあります。
まとめ
水性インキは、環境負荷の低減や安全性向上を実現する持続可能な印刷材料として、印刷業界で注目されています。その歴史は環境問題への対応から始まり、現在では多様な分野で利用されています。適切な設備や管理を導入することで、より広範な用途での活用が期待されており、今後の印刷業界の発展において重要な役割を果たす技術です。
