印刷業界における脱色とは?
印刷業界における「脱色」(ふりがな:だっしょく、英:Deinking、仏:Désencrage)とは、印刷物からインクを取り除き、紙の再利用を可能にするためのプロセスです。脱色は、リサイクル用紙の生産や、印刷ミスによる不良品の処理に欠かせない工程で、インクを化学処理や物理的処理によって除去し、紙を元の状態に近づけます。特に、持続可能な印刷業務や環境保護の観点から重要視されています。
脱色の概要
脱色は、紙をリサイクルする際に、印刷されているインクやトナーを除去し、紙を再利用可能な状態にする工程です。リサイクル紙の製造プロセスでは、使用済みの印刷物からインクを取り除くことで、白い紙に戻して再び印刷物として使用できるようにします。脱色の主な手法として、浮遊選別法と洗浄法の2種類があり、紙やインクの種類、用途に応じて選ばれます。
浮遊選別法では、インクを紙の繊維から分離し、泡の表面に浮かせて除去します。この方法は特に新聞紙やコピー用紙の脱色に効果的です。洗浄法では、水と化学薬品を用いてインクを洗い流し、紙から分離させます。近年、脱色の際に使用される化学薬品が環境に配慮したものに改善されており、環境保護とリサイクル率の向上に貢献しています。
脱色の歴史と背景
脱色の技術は、紙のリサイクルの必要性が高まった20世紀初頭から発展してきました。当初、紙はインクが付着していてもリサイクルされていましたが、再生紙の質が低下し、用途が限られてしまうという課題がありました。これにより、インクを取り除いて白紙に戻す技術が求められるようになり、脱色が導入されました。
1970年代以降、環境問題への関心が高まるとともに、紙のリサイクルが進展し、脱色技術も急速に発展しました。特に、オフィスから出る大量のコピー用紙や新聞紙のリサイクルが求められるようになり、より効率的な脱色方法が開発されました。21世紀に入り、環境負荷を減らすための化学薬品の改善が進み、脱色工程でも環境にやさしい処理が行われるようになりました。
脱色の技術的な側面と注意点
脱色のプロセスには、紙の品質を保ちながらインクを効率的に除去する技術が必要です。浮遊選別法は、紙の繊維が損なわれにくく、インクを浮かせて取り除くため、脱色効率が高く、再生紙の品質も維持されやすい方法です。この方法では、紙と水を混ぜたパルプに泡を発生させ、インク粒子を泡に付着させて除去します。
一方、洗浄法はより強力なインク除去が可能であり、特にコーティング紙や高品質な印刷物の脱色に適しています。洗浄法では、紙を水と化学薬品で洗い流し、インクを分離する方法であり、洗浄力が強いため、コート紙や光沢紙の脱色に使用されます。ただし、洗浄に使用する化学薬品の選定には注意が必要で、環境への影響や紙の繊維が損なわれないよう配慮が求められます。
また、脱色の工程ではインク以外の異物(ステープルやフィルム)も取り除く必要があります。これらの異物が含まれると脱色が不完全になるため、事前に取り除かれることが多く、脱色工程の効率と品質が向上します。
現在の脱色の使い方と応用例
現在、脱色技術は再生紙の製造過程で重要な役割を果たしており、企業や学校、官公庁などから収集される古紙をリサイクルするために用いられています。例えば、新聞紙や雑誌、オフィス用紙など、大量の印刷物が脱色処理されて再生紙として生まれ変わります。これにより、紙のリサイクルが進み、持続可能な資源の利用が促進されています。
また、脱色は印刷業界だけでなく、包装業界や製紙業界でも活用されています。パッケージやラベルなどの印刷物を脱色し、包装用の再生紙として利用することも増えており、特に環境負荷を低減する取り組みが進んでいます。さらに、印刷物の不良品や試作品も脱色処理され、紙の再利用が可能になるため、印刷工場の廃棄物削減にもつながっています。
まとめ
脱色は、印刷物からインクを除去して紙を再利用可能にするための重要な技術です。リサイクルと環境保護の観点から、脱色技術は今後も必要とされる技術であり、特に環境にやさしい処理方法がさらに進展することが期待されています。持続可能な社会に向けて、脱色技術は紙のリサイクルと資源保護に大きく貢献していくでしょう。