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印刷業界における低温乾燥とは?

印刷業界における「低温乾燥」(ふりがな:ていおんかんそう、英:Low-Temperature Drying、仏:Séchage à Basse Température)とは、印刷物を低温で乾燥させる技術です。この技術は、印刷インクの乾燥を適度な温度で行うことにより、紙やインクにかかる負担を減らし、品質を保持するために利用されます。特に熱による変色や歪みのリスクを抑えることができ、紙の保存性も向上します。


低温乾燥の概要

「低温乾燥」は、印刷業界において高品質な仕上がりを追求するための乾燥技術の一つです。通常、インクの乾燥には熱が利用されますが、過度な熱は紙の収縮や色ムラ、歪みを引き起こす可能性があります。低温乾燥は、これらの問題を防ぐため、適度な低温環境での乾燥を行い、印刷物の仕上がりを安定させる効果があります。

特にデリケートな印刷物や、高品質が求められる美術印刷などにおいては、温度管理が重要であり、低温乾燥が使用されることが一般的です。また、低温乾燥はエネルギー消費を抑える効果もあり、環境負荷の低減にも貢献しています。

低温乾燥のプロセスと方法

低温乾燥のプロセスは、印刷物の種類やインクの特性に応じて異なります。まず、インクが完全に乾燥するために必要な温度と時間を設定し、乾燥機内で適切な気流と湿度を維持します。これにより、インクの乾燥を均一にし、紙への負荷を最小限に抑えることが可能です。

一般的に使用される乾燥方式として、赤外線(IR)や紫外線(UV)などの低温乾燥装置があり、インクの種類によって使い分けられます。たとえば、UVインクを使用する場合、紫外線ランプによりインクを瞬時に硬化させる方法が取られます。一方、溶剤系インクでは赤外線乾燥が多く用いられ、低温で乾燥が可能です。

また、乾燥プロセスの初期段階で温度を低めに設定し、徐々に温度を上げて乾燥を完了させる方法もあります。これにより、急激な温度変化によるインクの変色や紙の収縮が避けられ、均一な仕上がりが得られます。

低温乾燥の歴史と進化

低温乾燥技術は、印刷業界がインクの乾燥を効率化するために考案され、技術の進歩とともに発展してきました。初期の印刷業では、自然乾燥が主流でしたが、印刷速度の向上が求められるとともに、効率的な乾燥方法の開発が進みました。

特に20世紀後半から、赤外線や紫外線を用いた乾燥技術が導入され、短時間で効率的に乾燥できるようになりました。さらに、環境意識の高まりとともにエネルギー消費を抑えるため、より低温での乾燥が求められるようになり、現代の低温乾燥技術が発展しました。

また、低温乾燥は、品質維持の面だけでなく、紙やインクの物理的な安定性を保つためにも重要です。高温乾燥による紙の変形やインクの劣化を避け、長期保存に適した印刷物が得られることから、特に高級印刷や保存性を求められる資料に活用されています。

現在の低温乾燥の重要性と使用例

今日の印刷業界において、低温乾燥はさまざまな分野で活用されています。たとえば、美術印刷や学術書、写真集など、精細な色彩再現や長期保存が求められる印刷物においては、紙やインクへの負担を軽減する低温乾燥が特に重要です。

さらに、エコロジーやサステナビリティの観点から、低温乾燥は環境に優しい技術として注目されています。従来の高温乾燥に比べてエネルギー消費が少なく、カーボンフットプリントの低減にも貢献しています。これにより、環境意識の高い企業や、持続可能な印刷工程を追求する印刷会社では、低温乾燥が積極的に採用されています。

まとめ

低温乾燥は、印刷業界において品質と環境保全の両立を図るために欠かせない技術です。歴史的には効率化を求める中で発展してきましたが、現在では品質向上と環境保護の観点からも重要な役割を果たしています。印刷物の精度と保存性を保ちながら、エネルギー消費を抑える低温乾燥は、今後も持続可能な印刷業の発展において不可欠な技術として活用されていくでしょう。

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