継ぎ足しとは?
印刷業界における「継ぎ足し」(ふりがな:つぎたし、英:Tiling or Splicing、仏:Raboutage)とは、大判印刷物や長尺の印刷物を製作する際に、複数の印刷面を継ぎ合わせて一つの完成物にする工程を指します。限られた印刷機のサイズや素材の制約を超えて、大きな印刷物を効率的に作成するために行われます。
継ぎ足しの概要
「継ぎ足し」は、印刷業界で大判ポスター、バナー、看板、包装紙などを製作する際に用いられる重要な技術です。多くの場合、印刷機の物理的なサイズ制限を超える大きな印刷物が必要となるため、一度に全体を印刷することができません。この制限を克服するため、複数の小さな印刷部分を継ぎ合わせ、最終的に一枚の大きな印刷物を完成させる技術が「継ぎ足し」です。
具体的には、デザインを適切なサイズに分割し、それぞれを別々に印刷した後、印刷物を正確に並べて接合します。この接合部分が目立たないように調整することで、自然な仕上がりを実現します。
継ぎ足しの歴史と由来
「継ぎ足し」という概念は、印刷技術が進化する以前から存在していました。手描きの看板や壁画などでは、物理的な制約を超えて大きな作品を作るために、複数の素材を継ぎ合わせる技術が用いられていました。
印刷業界においても、特にオフセット印刷が普及した20世紀初頭から、大判印刷のニーズが高まりました。しかし、当時の印刷機ではサイズに制限があったため、継ぎ足し技術が必要不可欠となりました。その後、デジタル印刷や大型プリンターの登場により、より精密で効率的な継ぎ足しが可能となり、現在では様々な用途で広く活用されています。
現在の継ぎ足し技術と方法
現代の印刷業界では、継ぎ足し技術はデジタルツールやソフトウェアの助けを借りて行われます。例えば、Adobe IllustratorやPhotoshopを使用してデザインを正確に分割し、印刷後に接合する際のズレを最小限に抑えることができます。
さらに、大型インクジェットプリンターやUVプリンターでは、精密なカラーマッチングが可能であり、接合部分の色の違いをほとんど感じさせない仕上がりを実現します。接合部分には専用の接着剤や溶着技術が用いられ、耐久性と美観を両立させています。
また、現在では「無縫製」の技術も進化しており、接合部分を全く見せない加工が可能となっています。これにより、屋外広告や展示用のグラフィックなど、高品質が求められる場面でも継ぎ足し技術が採用されています。
継ぎ足しの重要性と使用例
継ぎ足し技術は、印刷物のサイズに制約がある場合でも、大型の製品を効率的に生産できるため非常に重要です。例えば、屋外広告の巨大なビルボードや、展示会で使用されるバックドロップ、劇場用の背景幕など、通常の印刷機では製作できない大判印刷物に活用されます。
また、商業用途だけでなく、美術分野やインテリアデザインにおいても、大きな壁画や装飾品を作成する際に継ぎ足し技術が使われています。これにより、空間全体を活用したダイナミックな表現が可能となります。
まとめ
継ぎ足しは、印刷業界においてサイズの制約を超えるための重要な技術です。その歴史は長く、手作業からデジタル技術へと進化を遂げ、現在では大判印刷の分野で不可欠なプロセスとなっています。今後も、さらなる技術革新によって、より高品質で効率的な継ぎ足しが期待されます。