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印刷業界における大豆油インキとは?

印刷業界における大豆油インキ(だいずゆいんき、Soy-based Ink / Encre à base de soja)とは、大豆から抽出される油を主成分として使用したインクのことを指します。従来の石油系溶剤を使用したインクに比べ、環境への負荷が低く、再生紙への印刷適性にも優れるため、環境に配慮した印刷材料として注目されています。新聞印刷をはじめ、商業印刷やパッケージ印刷など多くの分野で使用されています。


大豆油インキの歴史と言葉の由来

大豆油インキの開発は、1970年代のアメリカで始まりました。当時、石油価格の高騰や環境汚染への懸念が高まる中、石油系溶剤の代替として植物由来の油が注目されました。その結果、アメリカ大豆協会(ASA: American Soybean Association)と印刷業界が共同で研究を進め、大豆油を使用したインクが実用化されました。

「大豆油インキ」という名称は、主成分である大豆油を明示することで、環境に配慮した製品であることを示しています。このインクは、アメリカを中心に普及し、1990年代以降は日本を含む世界各国でも採用が進みました。

大豆油インキの特徴と利点

大豆油インキには、以下のような特徴と利点があります。

1. 環境負荷の軽減: 大豆油は再生可能な資源であり、石油系溶剤を大幅に削減することで、二酸化炭素排出量の削減や廃液処理の負担軽減に寄与します。

2. 印刷適性の向上: 大豆油の特性により、インクの発色が良く、鮮やかな印刷が可能です。また、乾燥性や密着性にも優れています。

3. 再生紙への適合性: 石油系インクと比べて再生紙の繊維にインクが浸透しにくく、リサイクル効率が向上します。これにより、紙のリサイクルプロセスが簡素化されます。

4. 安全性の向上: 石油系溶剤を減らすことで、揮発性有機化合物(VOC)の排出を抑え、作業環境の改善に繋がります。

大豆油インキの使用例

大豆油インキは、以下のような印刷物で広く使用されています。

1. 新聞印刷: 環境配慮が求められる新聞業界では、大豆油インキが主流となっています。特にアメリカの新聞では、90%以上がこのインクを採用しています。

2. 商業印刷: カタログパンフレット、雑誌など、鮮やかな発色が求められる印刷物で使用されています。

3. パッケージ印刷: 食品パッケージやエコ製品の包装など、環境への配慮が重要視される分野で採用されています。

4. 教育関連印刷: 学校や図書館向けの教材や本でも、環境に優しい素材として利用されています。

大豆油インキの課題と未来

大豆油インキの普及にはいくつかの課題があります。

1. コストの問題: 石油系インクに比べて原料費が高くなる場合があり、価格競争力の向上が課題です。

2. 技術的制約: 特定の印刷条件や高速印刷には適さない場合があり、改良が求められています。

3. 原材料の供給: 大豆の供給は農業生産に依存するため、収穫量や価格の変動が影響を及ぼす可能性があります。

未来においては、大豆油インキの技術がさらに改良され、幅広い印刷用途での採用が進むと期待されています。また、環境規制の強化やエコ製品への需要増加により、大豆油インキの市場は拡大する見込みです。持続可能な印刷業界を支える重要な技術として、今後も注目されるでしょう。

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