印刷業界における天糊とは?

印刷業界における天糊(ふりがな:てんのり、英:Top Glue Binding、仏:Collage par le Haut)とは、紙の束を上部(天)だけで糊付けして固定する製本方法を指します。天糊は、メモ帳やノート、請求書の帳票など、頻繁にページを剥がして使用する印刷物に用いられます。製本コストが抑えられるため、手軽な印刷物の制作に適しています。また、天糊製本は作業効率が良く、短納期の対応にも優れています。


天糊の概要

天糊とは、紙の束を上端のみ糊付けして固定する製本方法の一種です。この方法では、ページを1枚ずつ簡単に剥がすことができるため、メモ帳や会計帳票、伝票などで広く使用されています。糊付けは、一般的に速乾性の接着剤を用いて行い、短時間で製本できるのが特徴です。

天糊製本は、製本工程がシンプルであり、他の製本方法(例えば無線綴じや中綴じ)に比べてコストが低く抑えられます。そのため、費用対効果が高く、大量印刷物や短期間での大量制作が求められる場合に適しています。また、天糊の特性として、ページを剥がした際に他のページに影響を与えないため、メモや控えとして使用される場面に最適です。

天糊の歴史と由来

天糊の技術は、19世紀の終わり頃から普及し始めました。当初は、手作業で糊を塗り、簡単な帳票やメモ帳を製本していました。印刷技術が進化し、大量生産が可能になるにつれ、天糊製本も機械化され、生産効率が向上しました。

20世紀に入ると、速乾性の接着剤の開発が進み、天糊製本の工程がさらに効率化されました。特に、事務用品や会計帳票など、頻繁にページを剥がして使用する印刷物において、天糊の需要が急増しました。また、近年では環境に配慮した水性接着剤が普及し、持続可能な製本方法としても注目されています。

天糊の現在の使われ方

現在、天糊は以下のような用途で広く利用されています:

  • メモ帳:簡単に1ページずつ剥がせるため、ビジネスシーンや日常生活でのメモ帳として使用されています。
  • 請求書・伝票:控えと本紙を分けるための帳票類で、効率的な管理をサポートします。
  • クーポンブック:ページを剥がして使用するタイプのクーポンに最適で、利用者にとっても扱いやすい形式です。
  • ノートパッド:一時的なメモ書きやアイデア出しに便利なノートパッドとして、オフィスや教育現場で活用されています。

さらに、デザイン性を重視したメモ帳やカスタマイズされた企業向けの販促品としても、天糊製本が用いられています。多様な紙質やカバー素材と組み合わせることで、ブランドイメージを強調することが可能です。

天糊の利点と注意点

天糊製本には以下の利点があります:

  • コスト効率:製本工程がシンプルなため、コストを抑えつつ大量生産が可能です。
  • 作業効率の向上:短納期のプロジェクトにも対応しやすく、速乾性接着剤を使用することで素早く製本が完了します。
  • 使いやすさ:1ページずつ簡単に剥がせるため、ノートや伝票などで利便性が高いです。

一方、以下の点に注意が必要です:

  • 耐久性:上端のみの糊付けのため、頻繁にページをめくる用途には適していません。また、湿気や高温の環境では糊が劣化する可能性があります。
  • ページ数の制限:多くのページを糊付けすると、接着強度が弱まり、ページが剥がれやすくなります。そのため、適切なページ数での使用が推奨されます。
  • 環境への配慮:従来の石油系接着剤は環境負荷が高いため、環境対応型の水性接着剤の使用が推奨されています。

まとめ

天糊は、効率的でコストパフォーマンスに優れた製本方法として、印刷業界で広く活用されています。特にメモ帳や伝票など、頻繁にページを剥がす用途において、その利便性が評価されています。今後も、環境に配慮した接着剤の開発が進むことで、さらに多様な用途での活用が期待されます。天糊製本の特性を理解し、適切な用途に合わせて活用することで、印刷物の価値を最大限に引き出すことが可能です。

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