【アパートとは？】ビジプリ不動産業界用語辞典

アパートの定義と不動産業界での分類

「アパート」とは、不動産業界において集合住宅の一種であり、建物内に複数の住戸が設けられている形式を指します。構造的には木造、もしくは軽量鉄骨造であることが多く、2階建てや3階建て程度の比較的低層の建物が該当します。

同じ集合住宅である「マンション」との違いは、主に建築構造と階数にあります。マンションがRC造（鉄筋コンクリート造）やSRC造（鉄骨鉄筋コンクリート造）であるのに対し、アパートはそれよりも簡素な構造で建てられます。また、遮音性や耐震性、設備面においてもマンションより簡素であることが多く、その分賃料が抑えられている点が特徴です。

不動産登記上では、アパートとマンションを区別する明確な定義はありませんが、実務上はこのように構造や設備の違いによって呼称が使い分けられています。

また、アパートはほとんどが賃貸住宅として提供されており、入居者は賃貸借契約を締結することで住戸を使用します。オーナー（貸主）は建物全体を所有し、管理や運営を行う形態が一般的です。

アパートという言葉の由来と歴史的背景

「アパート」は、英語の「apartment」に由来しますが、日本においては和製英語として独自の意味を持っています。本来の英語では「apartment」は集合住宅の一室、あるいはマンション全体を指す場合がありますが、日本では特に「木造・低層・賃貸型の集合住宅」を「アパート」と呼ぶのが慣例となっています。

この呼び方が定着したのは、戦後の高度経済成長期です。都市部への人口流入が急増し、住宅需要が高まった中で、比較的安価かつ短期間で建築可能な住宅としてアパートが普及しました。特に1960年代から1980年代にかけては、いわゆる「文化アパート」と呼ばれるタイプが登場し、台所や水洗トイレ、浴室などを備えたコンパクトな住空間が中流家庭の新しい住まいのスタイルとして定着しました。

その後、バブル期には高層の分譲マンションが住宅供給の中心となる一方で、アパートは引き続き単身者・学生・若年層向けの手頃な住宅として根強いニーズを維持しています。

現在のアパートの役割と社会的意義

現代においてアパートは、賃貸住宅市場の中核として重要な役割を担っています。特に都市部では、大学生や新社会人、単身赴任者、高齢者など、様々な生活スタイルに対応する住宅として利用されています。

最近では、従来の簡素なイメージを払拭するようなデザイン性や機能性を備えたアパートも増加しています。たとえば、ロフト付き、インターネット無料、防犯カメラ設置、ペット可、宅配ボックス完備など、住みやすさと利便性を兼ね備えた物件が登場し、差別化が図られています。

また、土地活用の一環としてアパート経営に参入する個人・法人も多く、相続税対策や老後の収益源として注目されています。こうした背景から、賃貸アパートの需要と供給は地域によってバランスを取りつつも、一定の市場規模を維持しています。

一方で、空室率の上昇、築古アパートの老朽化、賃貸経営の収益性低下などの課題も顕在化しており、入居者ニーズに合った物件企画や適切なメンテナンス、管理会社との連携など、アパート経営には戦略的な運用が求められる時代となっています。

さらに、若年層や外国人労働者、高齢単身者など、多様な入居者層が増えている現在、居住支援や生活サポート機能を備えたアパートの登場も期待されています。

まとめ

アパートは、低層・木造を基本とした集合住宅として、戦後日本の住宅需要を支えてきた重要な住宅形態です。賃貸を中心に提供され、コスト面や利便性に優れた住まいとして、多くの人々の暮らしに寄り添ってきました。

現在では、建物のデザインや機能性も向上し、また投資・経営の対象としても多様な展開を見せています。今後は、地域のニーズに即したアパート開発と、住環境の質の向上がさらに求められる時代になるといえるでしょう。