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不動産業界における物上保証とは?

不動産業界の分野における物上保証(ぶつじょうほしょう、Real Security, Garantie r?elle)は、自らの債務ではない他人の債務を担保するために、自身が所有する不動産や動産などの物的資産に担保権(抵当権など)を設定する行為を指します。保証人のように人的責任は負わず、担保物件の範囲に限定して責任を負うのが特徴です。不動産取引や融資場面において重要な担保提供手段の一つです。



物上保証の定義と法的な仕組み

物上保証とは、債務者本人ではない第三者が、その債務の履行を担保するために自らの財産に抵当権や質権などの担保権を設定することをいいます。民法上、これは人的保証とは異なり、物(資産)によってのみ保証の責任を負う制度です。

物上保証における基本的な構造は以下の通りです。

・債務者:主たる債務の支払義務を負う者(例えば借入を行う企業など)

・物上保証人:債務者の債務履行を担保するために、自分の不動産などを提供する第三者

・債権者:債務の弁済を受ける者(金融機関など)

たとえば、ある会社が金融機関から借入をする際に、会社の経営者が自宅の土地や建物に抵当権を設定する場合、経営者は物上保証人となり、債務不履行時に担保物件の範囲内でのみ責任を負います。

この保証形態は、担保提供者に人的責任が及ばないことから、限定的かつ明確なリスク管理を可能にする方法として利用されます。



物上保証の語源と歴史的背景

「物上保証」という用語は、「物上」=財物(不動産・動産)に関する、「保証」=債務を担保する、という意味を持ち、財産(物)に担保責任を限定する保証という概念です。英語では “Real Security” または “Collateral Guarantee”、フランス語では “Garantie r?elle” などと訳されます。

この概念は、ローマ法に起源を持ち、中世ヨーロッパの担保制度においても発展してきた法的伝統に基づいています。日本では明治民法の制定により、人的保証と物的保証(物上保証)の区別が明文化されました。

高度経済成長期以降、企業や個人の資金調達が活発になる中で、物上保証は金融機関の貸付リスクを軽減する手段として実務に広まりました。特に中小企業の借入において、経営者の自宅や資産が担保として差し出されるケースが多く見られるようになりました。

その一方で、バブル崩壊後には保証責任をめぐるトラブルが頻発し、物上保証に対する理解と法的保護の整備が求められるようになりました。



現代における物上保証の活用と注意点

今日の不動産取引や融資の現場において、物上保証は以下のようなシチュエーションで活用されています。

・法人の融資において、代表者や親族が自宅などを担保に差し出す場合

・不動産売買で第三者が担保設定し、資金調達に協力する場合

・相続や事業承継に伴い、保証人の代わりに物上保証で担保提供を行う場合

物上保証の主なメリットは次の通りです。

・担保責任が物件の価値に限定されるため、保証人にとってリスクが明確である

・債権者側も、現実的な担保物件を確保できるため安心感がある

一方で、次のような注意点もあります。

・債務者が債務不履行となった場合、担保物件は競売にかけられるリスクがある

・物上保証人には通常、保証意思の確認が厳格に求められる(公正証書など)

・物件の所有権者が複数いる場合(共有名義)、全員の同意が必要

・物上保証に基づく担保権設定は登記されなければ第三者に対抗できない

また、物上保証と人的保証が混同されることもあり、契約締結時にはその内容の明確な説明と書面化が不可欠です。近年では、金融庁や公的機関のガイドラインにより、過度な保証取得の抑制や、説明義務の強化が進んでいます。

特に不動産取引においては、担保物件の適正評価や、物上保証解除(抵当権抹消)手続きの重要性が高まっており、専門家(司法書士・弁護士等)との連携が求められる場面も増えています。



まとめ

物上保証とは、第三者が他人の債務を担保するために自らの不動産などに担保権を設定する保証形態であり、人的保証とは異なり責任が物件に限定される点が特徴です。

不動産を活用した信用補完手段として、企業融資や不動産取引で活発に利用される一方、正確な理解とリスク認識が不可欠です。

今後も物上保証は、不動産の価値を最大限に活用しつつ、保証人保護とのバランスをとる重要な制度として、金融実務と法制度の両面で注目されていくでしょう。

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