不動産業界における地積測量図とは?
不動産業界の分野における地積測量図(ちせきそくりょうず、Cadastral Survey Map、Plan de mesurage du terrain)は、登記所に備え付けられた土地の正確な位置・形状・面積・境界点などを記載した図面であり、土地の分筆や合筆、地積更正登記などの際に作成されます。法務局の登記簿における地積の裏付け資料として非常に重要な役割を持ち、境界確定や不動産取引において信頼性の高い資料として活用されています。
地積測量図の定義と機能
地積測量図とは、土地の境界や地積(面積)を正確に測量し、その結果を図面として法務局に提出・保管する資料であり、不動産登記において公的な証明力を持つ重要書類です。
土地の形状、各辺の距離、方位、隣接地との関係、境界点の位置(境界標)などが明確に記載されており、登記された地積(面積)の根拠資料として使用されます。
地積測量図は、以下の登記手続きの際に必ず作成・提出されます。
・分筆登記(1筆の土地を2筆以上に分ける)
・地積更正登記(土地面積の誤りを正す)
・土地の表示登記(土地が新たに登記される)
作成は通常、土地家屋調査士が現地測量を行い、必要な境界確認を経て実施します。
地積測量図が登記簿と併せて保存されている場合、その土地の登記簿情報と測量精度に裏付けされた図面情報を照合することができ、取引や境界協議におけるトラブル回避に寄与します。
地積測量図の由来と法制度の歴史
「地積測量図」という名称は、「地積」=土地の面積、「測量」=測定すること、「図」=図面を意味します。英語では “Cadastral Survey Map”、フランス語では “Plan de mesurage du terrain” と表現され、世界各国で同様の制度が土地管理の根幹として運用されています。
日本においては、明治時代の「地租改正」によって土地の所有関係と課税制度が整理されましたが、当初の図面(旧土地台帳付属地図、公図)は測量精度が低く、筆界(境界)や面積の誤差が多く含まれていました。
その後、1950年代以降、不動産登記法や土地調査法の整備が進み、登記の正確性を担保する目的で地積測量図の制度が確立されました。
とりわけ土地分筆登記を行う際には、測量による現地確認と図面提出が義務付けられ、これにより土地登記制度全体の精度向上が図られるようになりました。
2005年の不動産登記法改正後もこの制度は維持されており、近年では電子図面の整備が進み、オンラインでの地積測量図取得も可能となっています。
地積測量図の実務と活用上の注意点
地積測量図は、以下のような場面で実務的に使用されます。
・不動産売買時の面積・境界確認
・住宅ローンの担保評価(特に土地が対象の場合)
・隣地との境界トラブルの予防・解決
・建物建築時の敷地確認や配置設計
法務局で交付を受ける際には、土地の所在地や地番の情報が必要であり、「地積測量図交付申請書」を提出することで図面を取得できます。
ただし、すべての土地に地積測量図が備え付けられているわけではありません。特に旧来の土地では、地積測量図が存在しない場合も多く、現地測量や境界立会いによる再作成が必要となることがあります。
また、登記簿の地積と実際の測量値が異なる場合、地積更正登記を行うことで、登記簿情報を現況に合わせることができますが、その際にも地積測量図の作成が必須です。
近年では、一部地域において「筆界特定制度」が運用されており、地積測量図をもとに筆界の特定を行政機関が支援する制度も活用されています。
まとめ
地積測量図とは、土地の正確な形状・面積・境界点を測量により明示した図面であり、登記所における土地情報の信頼性を支える重要な資料です。
不動産取引、開発、相続、境界協議など多様な実務の基盤として活用されており、その精度と存在の有無が不動産の価値や法的安定性に直結します。
今後も地積測量図は、正確な土地情報と境界保全を支える不可欠な登記図面として、その活用範囲と制度的重要性を広げていくことでしょう。