不動産業界における専有面積とは?
不動産業界の分野における専有面積(せんゆうめんせき、Exclusive Occupied Area、Surface privative)とは、マンションや集合住宅など区分所有建物において、個人が所有し、自由に使用・管理できる室内部分の床面積を指します。玄関ドアの内側からバルコニーの手前までの範囲が対象であり、共用部分(廊下、階段、エントランス等)は含まれません。売買契約や広告表示、固定資産税評価などで重視される重要な指標です。
専有面積の定義と測定基準
専有面積とは、区分所有者が独占的に使用できる住宅内部の床面積を示す用語です。マンションにおいては、自身の部屋の内側、すなわち玄関扉から室内の壁までの空間が対象となり、共用部には含まれません。
不動産広告や契約書類では、「壁心面積」と「内法面積」の2種類の測定基準が存在します。
・壁心(へきしん)面積:
壁の厚みの中心線で囲まれた面積。民間の不動産広告や販売図面では主にこの方式が使われます。
・内法(うちのり)面積:
壁の内側(内寸)を基準とした面積。登記簿や契約上の実質面積はこちらで記載されます。
一般的に、壁心面積のほうが内法面積よりも数%大きく表示される傾向があり、面積に対する誤認を防ぐため、表記基準の明示が義務づけられています。
なお、専有面積には、次のような空間は含まれません。
・バルコニー(共用部分であるが、専用使用権あり)
・玄関前ポーチ(専用使用可でも共用部)
・トランクルームなどの附属施設(位置や登記によって扱いが異なる)
専有面積の語源と制度の歴史
「専有面積」という語は、「専有」=特定の者が単独で使用・支配すること、「面積」=空間の広さ、という意味から成り立っています。英語では “Exclusive Occupied Area”、フランス語では “Surface privative” と訳され、集合住宅における私的使用部分を示す共通用語です。
日本で専有面積という概念が制度的に登場したのは、1962年に制定された「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」が発端です。この法律により、建物の一部(専有部分)と共用部分を明確に区別し、集合住宅でも不動産の所有権を個別に持つことが可能となりました。
それまでは長屋や借家の形式が一般的であり、所有権を伴わない賃貸が主流でしたが、高度経済成長期における都市化と住宅需要の拡大により、マンション市場が急成長し、専有面積の明示が不可欠となったのです。
1990年代以降は、不動産の透明性確保と消費者保護を目的に、「不動産の表示に関する公正競争規約」などのガイドラインも整備され、壁心か内法かの表示義務が強化されました。
専有面積の実務と注意点
専有面積は、売買、賃貸、税務、資産評価など不動産取引のさまざまな場面で活用されています。
・マンションの価格設定:
1平米あたりの単価で計算されるため、専有面積の大小が直接価格に影響します。
・固定資産税評価:
課税対象となる面積は、登記された「内法面積」に基づいて決定されます。
・住宅ローン審査:
延床面積や専有面積の確認は、ローン対象の価値判断に不可欠です。
・居住空間の広さ感覚:
実際に暮らすスペースは専有面積によって決まるため、生活設計や家具配置に直結します。
一方で、専有面積に関して注意すべき点もいくつか存在します。
・壁心と内法の違い:表記方式により数㎡の差が出るため、購入・契約時には基準の明示確認が必要です。
・広告上の「専有面積」には附属部分が含まれる場合がある:
トランクルームやサービスバルコニーなどが計上されていることもあるため、販売図面を細かく確認する必要があります。
・バルコニーは専有面積外:
日常的に使用する空間であっても、登記上は共用部であり、税法上の面積には含まれません。
このように、専有面積の扱いは法的・実務的に複雑な側面があるため、購入前や契約前には専門家への確認が望まれます。
まとめ
専有面積とは、マンションなどの集合住宅において区分所有者が単独で利用・管理できる室内部分の床面積を指し、建築法令や不動産実務における基礎的な面積情報です。
測定方法によって表示が異なるため、購入や契約時には「壁心」か「内法」かを確認し、誤解やトラブルを防ぐことが大切です。
今後も専有面積は、居住者の財産権や生活空間を数値で表す基本指標として、不動産市場の信頼性向上に貢献し続けるでしょう。