不動産業界における査定とは?

不動産業界の分野における査定(さてい、Appraisal、?valuation immobili?re)とは、土地や建物などの不動産について、その市場価値を専門的に算出・評価する行為を指します。不動産売却や購入、相続、担保設定、資産評価などの場面で用いられ、不動産会社や不動産鑑定士が、周辺相場・立地・建物の状態・市場動向などを基に価格を見積もる業務として重要な役割を果たします。



査定の定義と評価方法

査定とは、不動産の価格や価値を予測・評価するために行われる調査および分析の行為を指します。査定の目的は、主に「適正価格の算出」にあり、市場での売却活動や融資審査、相続税評価などの判断材料となります。

査定の方法には以下の2種類が存在します。

・簡易査定(机上査定):
現地調査を行わず、周辺の相場や公示価格、過去の取引事例などを用いて目安価格を算出する方法。オンラインでも可能。

・訪問査定(実査定):
実際に現地を訪れ、建物の状態・日照・騒音・接道・管理状況などを総合的に確認し、より正確な価格を提示する方法。

どちらの方法も、不動産の特性を踏まえた市場分析が前提であり、査定価格は「査定額」あるいは「想定売却価格」として提示されます。

査定に使用される主な要素は次のとおりです。

  • 立地(駅からの距離、周辺施設、治安など)
  • 築年数と建物の状態
  • 土地面積・建物面積・形状・接道状況
  • 法令上の制限(用途地域、建ぺい率・容積率など)
  • 近隣の類似物件の取引価格(実勢価格)

このように、査定は価格の根拠を数値化する行為であり、売主や買主にとっては不動産取引の出発点となります。



査定という言葉の由来と歴史的背景

「査定」という言葉は、「査」=調べる、「定」=決定する、の語源に由来し、物の価値や状態を調査・評価し、その結果を確定するという意味を持ちます。英語の “Appraisal” やフランス語の “?valuation” に相当します。

不動産査定の考え方は、不動産市場が成立して以来、常に売買価格の基準として存在していましたが、制度的な整備が進んだのは明治時代以降の土地制度確立以降です。

昭和時代には、バブル経済期に伴う地価高騰により、不動産価格の透明性と客観性が強く求められるようになり、不動産鑑定士制度の法制化や評価基準の整備が進みました。

さらに、インターネット技術の発展によって2000年代以降は机上査定サービスが普及し、誰でも簡単に複数の不動産会社から査定価格を比較できる環境が整いました。

現在では、不動産一括査定サイトの活用や、AI査定サービスなども登場し、より迅速・簡易な価格評価が可能となっています。



査定の実務的な役割と注意点

不動産査定は、さまざまな場面で実務的に活用されています。

・売却前の価格決定:
売主が不動産を売り出す際に、相場と適正価格の目安を知るために査定を依頼します。

・相続時の資産評価:
不動産の価値を相続財産として評価する必要がある際に査定が活用されます。

・金融機関による担保評価:
融資を受ける際、金融機関は査定価格を担保評価額として採用することがあります。

・離婚や財産分与における資産評価:
公平な分割のために不動産価値を査定することが求められます。

ただし、査定には以下のような注意点も存在します。

・査定価格は売却価格ではない:
あくまで「売れるであろう価格の予測」であり、実際の成約価格とは異なることがあります。

・不動産会社ごとの査定基準に違い:
業者によっては高く見積もって媒介契約を得ようとする場合もあるため、複数社の比較が有効です。

・訪問査定の方が精度が高い:
机上査定は手軽ですが、物件の個別事情まで反映しきれない点に留意すべきです。

これらを踏まえ、査定は不動産売却・購入・資産運用などの場面で適正価格を把握する手段として非常に有効ですが、査定価格だけに依存せず総合的な判断を行うことが重要です。



まとめ

査定とは、不動産の価値や価格を判断するための評価行為であり、売却・購入・相続・融資などにおいて不可欠な業務です。

訪問査定と机上査定の使い分けや、複数業者からの査定比較を行うことで、より精度の高い価格判断が可能になります。

不動産市場が変動しやすい今だからこそ、査定の役割はますます重要性を増しており、信頼できる業者選びと情報の正確な理解が、適切な取引の成功を左右する鍵となるでしょう。

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