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不動産業界における耐震補強とは?

不動産業界の分野における耐震補強(たいしんほきょう、Seismic Reinforcement、Renforcement parasismique)とは、既存の建物に対して地震時の倒壊や損壊リスクを軽減するために行う構造的な改修工事のことです。特に1981年以前の「旧耐震基準」で建てられた建築物においては、耐震診断の結果に基づいて補強工事を行うことで安全性を向上させ、資産価値の維持や災害時の被害抑制を図る重要な施策とされています。



耐震補強の定義と実施内容

耐震補強とは、建物が大地震に耐えられるようにするために、建物の構造体を強化する工事のことを指します。耐震診断によって「耐震性能が不足」と判断された建物に対して行われます。

補強の具体的な方法としては、以下のような手法が一般的です:

  • 耐力壁の増設:壁の量を増やして建物全体の横揺れ耐性を高める
  • 柱・梁の補強:金物や鉄骨、炭素繊維シートなどで構造部材の強度を向上させる
  • 基礎の補強:地盤との接点である基礎を拡張・補強し、建物全体の安定性を向上させる
  • ブレースの設置:筋交い状の構造材を追加して横揺れに対する耐性を強化

これらの工事は、建物の使用状態を保ちつつ段階的に行うことも可能であり、マンションなど集合住宅では住民の合意形成が重要な前提となります。



耐震補強の歴史と制度的背景

耐震補強の必要性が社会的に強く認識されたのは、1995年の阪神淡路大震災以降です。この地震では多くの旧耐震基準建物が倒壊し、多くの人命が失われたことから、国を挙げた耐震化推進政策が始まりました。

2006年の「耐震改修促進法」の改正により、一定の規模・用途を持つ建物に耐震診断と補強が努力義務化され、地方自治体も補助金制度などを通じて、補強工事の促進を支援しています。

また、マンションなど分譲集合住宅では、区分所有者の合意を得て長期修繕計画に組み込む形での実施が多く、補強後は資産価値の安定にも繋がると評価されています。



現代における耐震補強の重要性

日本は地震多発国であり、今後も大規模地震が予測されているため、耐震補強は災害リスクの低減と建物寿命の延伸の両面で極めて重要な対策です。

特に、老人福祉施設・病院・学校・集合住宅など多数の人が利用する建物では、補強の有無が安全性や信頼性に直結し、居住者や利用者の安心感にも影響します。

現代では、非破壊検査や3D解析シミュレーションなどの技術も発展し、より合理的で効率的な補強計画の立案が可能となっています。



まとめ

耐震補強とは、建物を地震から守るために必要不可欠な工事であり、既存建物の安全性向上と資産価値維持の両立を図る手段として不動産業界でも注目されています。

補助金や法制度を活用しながら、所有者・管理者が早期に取り組むべき施策として、今後ますます重要性を増していくといえるでしょう。

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