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不動産業界における減価償却とは?

不動産業界の分野における減価償却(げんかしょうきゃく、Depreciation、Amortissement)とは、建物や設備などの固定資産の取得にかかった費用を、その使用可能期間にわたって一定の割合で費用化していく会計上の処理を指します。不動産投資においては、減価償却によって課税所得を圧縮できるため、節税効果が期待されます。建物部分にのみ適用され、土地は減価償却の対象外です。



減価償却の定義と仕組み

減価償却とは、長期間にわたって使用される資産(建物や設備など)が時間の経過や使用によって価値を失っていくことを、毎期の費用として配分する会計処理です。

たとえば、不動産投資で購入した物件の建物価格が1,500万円で法定耐用年数が30年とされている場合、1年あたり50万円を減価償却費として計上できます。

この費用は実際に現金支出を伴わないため、キャッシュフローを維持しつつ、帳簿上の利益を抑える効果があります。結果として、課税所得が圧縮され、所得税や住民税の節税につながるという特徴があります。



減価償却の歴史と語源的背景

減価償却の考え方は、近代的な会計制度が整備された19世紀後半の西洋に由来し、日本には明治期の簿記制度導入とともに普及しました。

不動産業界においては、第二次世界大戦後の復興と経済成長に伴って大量に建設された建物の資産管理・費用配分が課題となり、減価償却制度が本格的に制度化されていきました。

特に1980年代以降の税制改正では、不動産所得に対する税務戦略としての減価償却が注目され、不動産投資家にとっての節税手段として定着しました。

なお、日本の税法では建物部分のみが減価償却の対象であり、土地には減価が生じないという前提から、償却は認められていません。



現代における減価償却の使われ方と注意点

現代の不動産投資において、減価償却はキャッシュフローを確保しながら税負担を抑える基本戦略として活用されています。

とくに、中古物件では法定耐用年数が短縮されるため、償却スピードが速まり、より大きな節税効果が得られる場合もあります。ただし、減価償却を過度に活用した節税スキームは、税務署の調査対象になることもあるため、正確な物件評価と適切な会計処理が求められます。

また、将来の物件売却時には「償却累計額」に応じて譲渡所得税が課税されるため、償却による節税効果と出口戦略を一体で考える必要があります。

法人所有の場合には、法人税への影響や設備償却とのバランスなども加味する必要があり、不動産と税務に精通した専門家の関与が望まれます。



まとめ

減価償却とは、不動産の建物部分にかかる取得費用を耐用年数に応じて配分し、毎年の費用として計上することで課税所得を減らす制度です。

不動産投資においては、節税と資金繰りの両面で重要な効果を発揮する一方で、税務上の取り扱いや将来の売却時の課税にも影響するため、慎重かつ戦略的な運用が求められます。

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