不動産業界における手付金とは?

不動産業界の分野における手付金(てつけきん、Earnest Money、Acompte)とは、不動産売買契約の締結時に、買主が売主に支払う一定額の金銭のことを指します。この金銭は、契約の成立を確認する役割を果たすとともに、解約時の違約金的機能も持ちます。一般的には売買代金の5?10%程度が支払われ、売買契約の信頼性を高めるための慣習的制度として、不動産取引の初期段階における重要な要素となっています。



手付金の定義と法律上の位置づけ

手付金は、不動産売買契約を締結する際に、買主が売主に対して支払う前金としての性格を持ち、契約成立の証および解約権留保の根拠となるものです。

民法第557条に基づき、契約において「手付」として授受された金銭は、買主が手付を放棄して契約を解除でき、売主は受け取った手付金の倍額を返還することで解除できるという制度的効果を持ちます。

これはいわゆる「解約手付」と呼ばれ、契約履行前に一方的に契約を打ち切ることが可能であるため、慎重な意思決定と契約準備を促す役割を果たしています。



手付金の歴史と語源的背景

手付という概念は、日本では古くから商慣習として存在しており、「約束の証」として金銭や品物を一時的に渡すことで、信義と誠意を担保する取引慣行が形成されていました。

明治時代に近代民法が整備される中で、この手付制度は解約手付・証約手付・違約手付などの法的区分として明文化され、不動産契約を含む売買契約において、重要な意思表示の形式として確立されていきました。

とくに不動産業界では、高額かつ長期的な取引が多いため、契約前の段階での当事者の信頼確保違約時のリスク抑制のために、手付金の授受が極めて重視されるようになりました。



現在の実務における手付金の使われ方と留意点

不動産売買契約において、手付金は通常、売買代金の5%から10%程度で設定され、契約締結時に現金や振込で売主に支払われます。

この手付金は、売買代金の一部に充当されるため、取引の途中で解約されなければ、最終的な支払額の一部となる点が特徴です。万一、契約が解除された場合は、買主は手付金を放棄し、売主が解除する場合は手付金の倍返しという形で処理されます。

注意点としては、手付解除が可能なのは契約履行の着手前までとされ、買主が引渡し準備を行うなど履行に着手したと見なされると、手付解除ができなくなることがあります。

また、宅地建物取引業法では、未完成物件に対する手付金の保全措置が義務づけられており、手付金の安全性確保のために保証機関や保全措置の有無の確認が求められます。



まとめ

手付金とは、不動産売買契約の成立を示すとともに、解約時の責任区分を明確にする金銭であり、契約の信頼性と履行意志を保証する仕組みです。

現代においても、不動産取引の初期段階における重要な要素として位置づけられており、金額設定・保全措置・履行時期などに配慮した適切な運用が求められます。慎重な契約判断と手続きの理解が、円滑で安全な不動産取引を実現する鍵となります。

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