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不動産業界における明渡し請求とは?

不動産業界の分野における明渡し請求(あけわたしせいきゅう、Eviction Notice、Demande d'expulsion)とは、貸主が借主に対して建物や土地を明け渡すよう求める法的手続きを指します。これは賃貸借契約の終了後や契約違反があった場合に行われる措置であり、任意の退去が得られない場合には裁判所を通じた強制執行に発展することもあります。不動産の権利関係を整理し、所有者の使用・処分の自由を確保するうえで重要な制度です。



明渡し請求の基本的な定義と内容

明渡し請求とは、貸主(不動産所有者)が借主に対し、占有中の建物または土地からの退去を求める正式な意思表示です。この請求は通常、賃貸借契約の終了、契約違反、賃料滞納などの理由に基づいて行われます。

借主が請求に応じない場合、裁判所に対して建物明渡請求訴訟を提起する流れになります。判決が確定しても借主が退去しない場合には、強制執行手続きによって実際の明渡しが行われます。



明渡し請求の歴史と背景

明渡し請求の概念は、近代日本の民法制定(1896年)と賃貸借制度の整備とともに確立されました。契約終了後の物件返還義務は民法第601条以下で規定されており、その延長線上にあるのがこの請求制度です。

戦後の住宅不足を背景に、借主保護の法制が強化された一方で、貸主側の権利回復の手段として明渡し請求の必要性が高まっていきました。1980年代以降は、特に商業ビルやマンション開発において、用地取得と権利調整のための法的インフラとして注目されました。

近年は、高齢化や孤独死、サブリース問題など、複雑な社会問題と結びついた明渡し請求の事案も増え、法的な対応と倫理的配慮の両立が求められるようになっています。



明渡し請求の実務と現代的な運用

現在の不動産実務では、明渡し請求は最終手段とされ、まず内容証明郵便などでの催告や交渉が行われます。それでも応じない場合、民事訴訟として建物明渡請求訴訟を提起します。

この訴訟には賃料支払命令、損害賠償請求、原状回復義務などが併せて含まれることも多く、法的知識と証拠の整備が求められます。裁判で勝訴したとしても、強制執行の実施には手続きと費用が必要であり、執行官による立会い明渡断行のスケジュール調整も発生します。

また、借主が高齢者や生活困窮者である場合、福祉的配慮を踏まえた行政との連携も重要です。こうした点を踏まえ、貸主と借主の対話を重視し、できるだけ任意退去を目指すのが望ましいとされています。



まとめ

明渡し請求は、賃貸借関係の終了や契約違反を理由に、貸主が借主に物件からの退去を求める法的措置です。契約上の権利回復のための正当な手続きであり、社会的公正と法的秩序のバランスが問われる重要な局面でもあります。

実務では、訴訟や強制執行の前に交渉の余地を探りながら、書面による記録と証拠管理を徹底することが求められます。明渡し請求は、物件の権利と使用の適正な管理を支える不可欠な仕組みといえるでしょう。

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