不動産業界における特定空家等とは?
不動産業界の分野における特定空家等(とくていあきやとう、Specified Vacant Houses、Maisons vacantes sp?cifiques)とは、「空家等対策特別措置法」に基づき、市区町村が調査・判断のうえで指定する空き家で、倒壊の危険や衛生上の問題、景観の悪化、周辺住民への悪影響などが認められる状態にある建物を指します。所有者の管理不全により問題が顕在化した場合に、行政が指導・勧告・命令・代執行などの措置を講じることが可能となる法的区分です。
特定空家等の定義と対象要件
特定空家等とは、2015年に施行された「空家等対策特別措置法」において定められた空き家の区分のひとつで、建物の老朽化や管理不全によって、周囲に危険や悪影響を及ぼすと自治体が判断した空き家のことです。単なる未使用の空き家ではなく、行政が以下のような状態を確認したものが該当します。
主な判断基準には、①倒壊など著しく保安上危険な状態、②著しく衛生上有害な状態、③著しく景観を損なっている状態、④その他周辺生活環境の保全に著しい支障がある状態があり、いずれかに該当すると判断された場合に特定空家等として指定されます。
この指定を受けると、所有者に対して管理改善の指導や勧告、命令が出されることがあり、それでも改善が見られない場合には行政代執行による解体や修繕も可能となります。勧告を受けた空き家は、固定資産税の住宅用地特例から除外されるため、経済的な負担も大きくなります。
背景と制度成立の経緯
特定空家等の制度は、急速に増加する空き家の中でも特に深刻な影響を及ぼす物件への対応を目的に設けられました。背景には、全国で空き家が800万戸を超えるとされる実態や、老朽化による倒壊、火災、不法投棄、不審火などのリスクの高まりがあります。
これに対応する形で、2014年に「空家等対策特別措置法」が成立し、2015年に施行されました。その中で、最も危険性や悪影響の大きい空き家を特定空家等として明確に区分し、行政対応の根拠を整備したことが制度の核心です。
制度の導入によって、地方自治体は空き家の実態調査を行い、必要に応じて段階的に措置を取ることが可能となりました。また、空き家所有者に対しても責任ある管理を求める風潮が社会的に醸成されるようになり、空き家の放置に対する意識改革が進められています。
まとめ
特定空家等とは、構造的な危険性や衛生・景観への悪影響を及ぼす状態にあると自治体が判断した空き家であり、所有者に対する法的な改善要求や行政代執行を可能にする法的枠組みです。
この制度は、空き家の適正管理と周辺環境の保全を目的とした実効性の高い施策として、全国の自治体で活用が進みつつあり、今後も重要性が高まることが予想されます。