不動産業界におけるコンパクトシティとは?
不動産業界の分野におけるコンパクトシティ(こんぱくとしてぃ、Compact City、Ville compacte)とは、都市機能を中心部に集約し、人口減少や高齢化が進む中でも効率的で持続可能な都市運営を可能にする都市構造を指します。公共交通と連携しながら、居住・商業・行政・医療などの機能を集積させることで、住民の生活利便性向上や行政コストの削減、環境負荷の軽減を図る都市政策の概念です。日本各地で再開発や都市再生の基本指針として採用が進んでいます。
コンパクトシティの定義と都市構造の特徴
コンパクトシティとは、都市全体を無秩序に拡大させるのではなく、都市機能を一部の中心拠点に集約し、都市の広がりを抑えるという都市政策の方針を意味します。主に地方都市や中小都市において、人口減少・高齢化・財政難といった社会課題に対応するための都市構造の再編として導入されています。
この都市構造では、公共交通を中心に居住地や商業施設、医療機関、福祉サービス、行政機能などを効率的に集め、徒歩やバス・鉄道などで日常生活が完結できるような都市空間を形成します。結果として、高齢者や子育て世帯にとって暮らしやすい都市環境が整備され、郊外への過度なインフラ投資を避けることができます。
近年は、周辺部を「郊外拠点」として補完的に活用しながら、都市のコンパクト化とネットワーク化を同時に進める「ネットワーク型コンパクトシティ」という考え方も普及しています。
コンパクトシティの起源と日本における展開
コンパクトシティという概念は、もともと欧州を中心に提唱された都市計画理論であり、エネルギー効率や環境保全を重視した持続可能な都市開発を背景としています。1970年代以降、都市スプロールによる交通渋滞や環境悪化への対抗策として注目され、特にオランダ、ドイツ、イギリスなどで政策に組み込まれました。
日本では、総務省・国土交通省を中心に、2000年代初頭から本格的に導入が始まりました。2005年の「都市再生特別措置法」や、2014年の「立地適正化計画制度」の導入により、地方自治体が居住誘導区域や都市機能誘導区域を設定し、人口減少時代に適応する持続可能な都市づくりを推進しています。
たとえば富山市や青森市などが先行モデル都市とされ、LRT(次世代型路面電車)と連動した市街地再編が進められ、高齢者が車を使わずに暮らせる都市の実現に取り組んでいます。
まとめ
コンパクトシティとは、都市の機能を効率的に集約・再編し、持続可能で利便性の高い都市構造を実現する政策手法です。
人口減少社会を迎える日本においては、財政負担の軽減・交通利便性の向上・環境負荷の削減などの観点から、今後のまちづくりの基盤となる重要な都市計画理念として、全国的に注目と導入が進んでいます。