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不動産業界における土地収用とは?

不動産業界の分野における土地収用(とちしゅうよう、Land Expropriation、Expropriation fonci?re)とは、公共の利益のために必要とされる土地について、法に基づき土地所有者の同意がなくても行政が強制的に取得する制度を指します。補償金の支払いを前提としたこの制度は、公共事業の円滑な実施を目的に定められた特別な権限であり、不動産取引や開発計画に重大な影響を及ぼします。



土地収用の定義と制度の仕組み

土地収用とは、「土地収用法」に基づいて行われる制度であり、道路・鉄道・河川・学校・防災施設などの公共事業を推進するために、私人の土地を強制的に取得または使用することができる行政権限です。

この制度は、以下のようなプロセスで実施されます。

  • 事業認定:国または地方公共団体が計画する事業が公共性を有するかを審査・認定
  • 用地取得交渉:まずは任意で土地の買収交渉を実施
  • 収用手続き:交渉が不調の場合、収用委員会に申請し、裁定により土地取得が決定
  • 補償金の支払い:土地価格や営業補償、移転費などが支払われる

収用された土地は、原則として公益のために使用され、目的外利用は禁止されています。また、補償は「正当な補償」が原則であり、適正価格を基にした金銭支払いが義務付けられています。



土地収用の歴史と法的背景

土地収用の制度は、明治時代の「土地収用法」制定に端を発し、戦後の1949年に現行の土地収用法が施行されました。戦後復興期や高度経済成長期の大規模インフラ整備において、道路・鉄道・ダム・新幹線などの整備を迅速に進めるため、収用制度は不可欠な仕組みとされました。

一方で、住民の財産権を制限する強い手段であることから、慎重な運用と手続的正義が求められ、事業認定や補償の公平性、収用委員会の独立性などが制度設計上の重要課題とされてきました。

現代では、都市部の再開発や大規模な災害復旧事業、リニア中央新幹線建設などで収用制度が活用されていますが、住民合意や環境配慮とのバランスを重視した運用が求められています。



まとめ

土地収用とは、公共の目的のために私人の土地を強制的に取得する制度であり、補償と法的手続きによってその正当性が担保されています。

不動産業界においては、対象となる土地の将来性・価格変動・権利調整の必要性を見極める上で、土地収用の知識と制度理解が不可欠であり、都市開発に深く関わる法制度として重視されています。

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