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不動産業界における損失補償とは?

不動産業界の分野における損失補償(そんしつほしょう、Loss Compensation、Indemnisation des pertes)とは、公共事業や都市開発の実施に伴い、土地・建物・営業活動などに被る不利益や損失に対して、正当な補填を行う制度を指します。これは財産権を保障する観点から重要な仕組みであり、補償金の算定、交渉、支払いといった実務は不動産取引や再開発に密接に関係しています。



損失補償の定義と対象範囲

損失補償とは、土地収用や再開発などの公共性の高い事業において、私人の財産権や経済活動に損害が発生した場合に、その損害を公平に評価し金銭で補填する制度です。この制度は、「正当な補償」の原則に基づいており、個人の財産権と公共の利益の調和を図ることが目的です。

損失補償の主な対象には以下が含まれます。

  • 土地や建物の収用による財産的損失
  • 建物移転に伴う引越費用・仮住まい費用
  • 営業補償(営業中止・移転による収入減)
  • 借地・借家権などの権利喪失に対する補償
  • 立木や工作物、物置など附属物の撤去補償

損失の評価は、現地調査、収益分析、実勢価格などに基づき客観的に査定され、行政または施行者が当事者と協議して金額を決定します。



制度の歴史と法律的背景

損失補償の制度は、憲法第29条にある「財産権の保障」の理念を土台としており、戦後日本において公共事業の推進と個人財産保護の両立を目的に整備されました。1949年に施行された「土地収用法」では、補償制度の詳細が明文化され、正当な補償の原則が法的に明確にされました。

高度経済成長期には、インフラ整備の加速と共に収用件数も増加し、住民との補償交渉が各地で課題となりました。その結果、1972年に「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」が策定され、補償内容の統一と透明性が進められました。

今日では、国土交通省などが定める補償ガイドラインや判例に基づいて、営業補償・移転補償・特別補償など多岐にわたる損失への対応が確立されており、公共事業の円滑化と権利者の生活再建が両立するよう設計されています。



まとめ

損失補償とは、公共事業によって被る財産的・経済的な損害に対して支払われる補填金であり、不動産業界では開発・再開発・収用に不可欠な法的概念です。

補償の妥当性や公平性は事業の信頼性に直結するため、的確な評価・丁寧な交渉・制度理解が不可欠であり、実務担当者にとって不可避の知識領域となっています。

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