不動産業界におけるCMとは?
不動産業界の分野におけるCM(しーえむ、Construction Management, Ma?trise d’ouvrage d?l?gu?e)とは、建設プロジェクトにおいて、発注者(施主)の立場から計画・設計・施工の全過程を総合的にマネジメントする業務形態を指します。発注者の代理としてスケジュール管理・コスト管理・品質管理などを担い、工事そのものは請け負わないコンサルティング型のサービスであり、大型不動産開発において特に注目されています。
CMの定義と業務範囲
CM(コンストラクション・マネジメント)とは、建築主が建物を建設する際、設計者や施工業者など多数の関係者の間に立ち、第三者的な立場でプロジェクトの全体をマネジメントする業務です。CM方式では、マネジメントを担当するCMr(Construction Manager)が契約の主体とはならず、建築主に対して助言や調整を行います。
CMの具体的な業務には、プロジェクト初期の企画支援、設計者選定支援、施工業者選定、工程・コスト・品質の管理、施工中の調整、引き渡し後のフォローアップなどが含まれます。請負契約における責任施工方式とは異なり、あくまでマネジメントに特化している点が特徴です。
言葉の由来と制度の歴史的背景
CMという概念は、1960年代にアメリカで誕生しました。当時の建設業界では、巨大化・複雑化する建設プロジェクトにおいて、従来のゼネコン中心の請負方式では発注者側の意向が十分に反映されにくく、コストや品質のコントロールが困難になるという課題が顕在化していました。
そこで、発注者の立場から独立したマネジメントを行う「CM方式」が生まれ、透明性の高いプロジェクト運営手法として世界中に広がりました。日本では2000年代初頭から官民問わず導入が進み、2007年には「建設業法の一部改正」によって、CMに関する一定の制度整備がなされ、法的位置づけが明確になりました。
現在の使われ方と不動産業界での意義
現在、CMは主に大型複合施設・病院・再開発ビル・商業施設などで採用されており、公共事業においても官民連携(PPP)プロジェクトで活用されています。CM方式の導入によって、次のようなメリットが期待されています。
- 発注者主導の透明性の高いプロジェクト進行
- コスト構造の可視化と予算超過リスクの抑制
- 設計・施工・管理の分離による品質向上
- 工期短縮とスムーズな調整・意思決定
不動産開発の現場では、CM方式の導入によって、施主の意向に沿った柔軟な設計・施工が可能になり、特に海外のデベロッパーや投資家が関与する案件において、国際標準に準じた運営方式として評価されています。
一方で、CM方式を導入するには高度な知識と経験を持つCMrが不可欠であり、人材確保と費用面の検討が必要です。また、発注者自身の意思決定スピードや判断能力も求められるため、導入にあたっては慎重な計画と社内体制の整備が必要とされます。
まとめ
CMは、不動産開発において発注者の利益と意向を最優先に考えたマネジメント型の建設手法であり、透明性と効率性を兼ね備えた運営が可能になります。特に大規模開発や官民プロジェクトにおいて、プロジェクトの成功可否を左右する重要な選択肢として、今後も注目され続ける方式です。