不動産業界におけるワンフロア貸しとは?
不動産業界の分野におけるワンフロア貸し(わんふろあがし、One Floor Leasing, Location d’un ?tage entier)とは、オフィスビルや商業ビルなどの1階層全体を1テナントに貸し出す賃貸形態を指します。分割賃貸とは異なり、テナントがフロア全体を専有できるため、自由度の高いレイアウトやプライバシーの確保、大規模利用が可能となる点が特徴です。
ワンフロア貸しの定義と主な特徴
ワンフロア貸しとは、ビルの1フロア全体を一括して1組の借主(テナント)に貸し出す賃貸形態です。主にオフィスビルや商業施設などで見られ、広い専有面積と自由度の高い使用が求められる法人向けに提供されることが多くなっています。
この形態の主な特徴は以下の通りです。
- 専有面積が大きいため、ワンルーム型レイアウトやゾーニングが自由に行える
- 共有スペースを最小限にでき、業務効率が高まる
- 他のテナントとの接触が少なく、プライバシーや機密性が高い
- 企業イメージの向上や一体感のある職場づくりに有効
また、トイレや給湯室などをテナント専用とすることが多いため、共用施設の利用調整も不要で、働きやすい環境が実現できます。
言葉の由来と普及の背景
ワンフロア貸しという言葉は、英語の 'One Floor'(1階層)と日本語の「貸し」を組み合わせた和製ビジネス用語で、1980年代頃から都市部の大規模オフィスビルで使われ始めました。高度経済成長期以降、企業の大型化とともに、部署間の連携や一体運営が求められる中で、一体的なオフィス空間が重視されるようになりました。
また、情報化時代の進展により、情報漏えい防止やセキュリティ強化の観点から、1フロアを丸ごと自社利用できる形態が企業に好まれる傾向も強まりました。2000年代以降は、ベンチャー企業の成長やスタートアップの拡大に伴い、柔軟なレイアウトを可能にするワンフロア貸しの需要が中小ビルでも増加しています。
近年では、コロナ禍を経てテレワークとオフィス回帰が並行するなか、フロア単位でのレイアウト最適化やゾーニング(集中・コラボ・会議空間の区分け)がしやすい点も評価されています。
現在の使われ方と不動産実務上のポイント
現在、ワンフロア貸しはオフィス用途を中心に以下のようなケースで多く活用されています。
- 中規模?大企業による本社機能・営業拠点の設置
- クリニック・美容医療などの来客型テナント利用
- デザイン事務所やIT企業による自由レイアウトの活用
ワンフロア貸しの導入に際しては、以下のような点を考慮する必要があります。
- フロア全体の耐荷重・空調・照明設備の仕様がテナント要件を満たしているか
- フロア専有型のセキュリティ(専用入口、カードキーなど)対応の可否
- 水回りや動線が1フロア単位で完結する構造になっているか
- 防災・避難経路の整備状況
不動産仲介業務においては、ワンフロア貸しの可能性を広告や提案時に明記することで、広さや使い勝手を重視するテナント企業に対してアピールポイントになります。また、賃料単価は面積や立地に加えてフロア専有性が影響するため、評価軸としても重要視されます。
まとめ
ワンフロア貸しは、1階層全体を1テナントで専有できる賃貸形式であり、業務の効率化、セキュリティの確保、自由な空間設計を可能にする点で、高い人気を誇ります。企業の多様な働き方への対応力や不動産価値の訴求力を高める上で、今後も重要な賃貸形態のひとつとして注目され続けるでしょう。