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舞台・演劇におけるアウトカムベースシアターとは?

舞台・演劇の分野におけるアウトカムベースシアター(あうとかむべーすしあたー、Outcome-Based Theatre、Théâtre basé sur les résultats)は、観客の経験や学習成果に重点を置いた演劇の形式を指します。従来の演劇が物語や演技の完成度に焦点を当てるのに対し、アウトカムベースシアターは観客が受け取るメッセージや影響を重視し、特定の感情、思考、行動の変化を促すことを目的とします。



アウトカムベースシアターの歴史と発展

アウトカムベースシアターの概念は、20世紀後半の応用演劇フォーラムシアターといった手法に起源を持ちます。これらは、演劇を単なる娯楽としてではなく、教育、社会的変革、心理的成長の手段として用いる試みから発展しました。

1970年代、ブラジルの演劇家アウグスト・ボアールによって提唱されたフォーラムシアターは、観客が舞台上の問題解決に積極的に関与する形式を取りました。この手法は、社会問題をテーマにした演劇の可能性を広げ、観客が受動的な存在ではなく、主体的に演劇に関与することを促しました。

21世紀に入ると、教育演劇や企業研修において、演劇を用いた体験学習が重要視されるようになり、アウトカムベースシアターの概念が確立されました。この手法は、観客が特定の知識を得たり、行動変容を促されたりすることを目的とした演劇の制作に応用されています。

アウトカムベースシアターの特徴と手法

アウトカムベースシアターの最大の特徴は、観客が得る「成果」に焦点を当てた演出が施されることです。そのため、以下のような手法が用いられます。

1. 参加型演劇
観客が物語の進行に影響を与える仕組みが取り入れられます。例えば、観客が選択肢を選ぶことでストーリーが変化するインタラクティブな演出が行われることがあります。

2. 教育・トレーニング演劇
学校教育や企業研修において、特定のスキルや価値観を学ぶ目的で演劇が活用されます。たとえば、医療従事者のコミュニケーション能力向上や、ハラスメント防止のための研修演劇が実施されることがあります。

3. 感情・行動変容を促す演出
観客の心理的な変化を意図的に生み出すため、演出には感情移入を誘発する要素が多く取り入れられます。リアルな対話や臨場感あふれる演出を用いることで、観客が現実世界に応用できる学びを得られるよう工夫されます。

アウトカムベースシアターの課題と今後の展望

アウトカムベースシアターは、教育や社会活動において重要な役割を果たしますが、いくつかの課題も存在します。

第一に、観客の「成果」を定量的に測定することが難しい点が挙げられます。演劇が観客に与える影響は個人差が大きく、すぐに行動変容につながるとは限りません。そのため、どのように成果を評価するかが課題となります。

第二に、物語の芸術性とアウトカム志向のバランスを取る必要があります。観客に学びや気づきを与えることを重視するあまり、物語の純粋な芸術的価値が損なわれることもあります。これを防ぐためには、演劇作品としての完成度を保ちつつ、メッセージ性を自然に組み込む演出が求められます。

今後、デジタル技術やバーチャルリアリティ(VR)を活用した新しい形のアウトカムベースシアターが登場する可能性があります。特に、バーチャル空間内での没入型演劇は、観客の体験をより深め、学習効果を高める手段として注目されています。



まとめ

アウトカムベースシアターは、観客が特定の知識を得たり、行動変容を促されたりすることを目的とした演劇の形式です。教育演劇やトレーニング演劇の分野で活用され、参加型の手法や感情を揺さぶる演出が特徴です。

今後、テクノロジーの発展とともに、新たな演出手法が開発され、アウトカムベースシアターの可能性はさらに広がるでしょう。観客が受け取るメッセージの効果を最大限に高めるため、演劇の新しい形として発展していくことが期待されます。


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