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舞台・演劇におけるアクティブパフォーマンスとは?

舞台・演劇の分野におけるアクティブパフォーマンス(あくてぃぶぱふぉーまんす、Active Performance、Performance active)は、舞台・演劇において俳優や演者が受動的な演技を超えて、能動的かつ即興的に観客や空間、状況と対話しながら展開する演技形態を指します。従来の台本や演出によって制御された「再現型の演技」に対し、アクティブパフォーマンスは、リアルタイムの選択、即興、身体性を重視し、「その場でしか成立しない一回性の表現」を追求する姿勢が特徴です。

この概念は、特定の形式やスタイルに限定されるものではなく、演劇、ダンス、パフォーマンスアート、インスタレーションなど、さまざまな芸術領域を横断する形で用いられています。とくに演劇の分野では、台詞や物語をなぞるだけでなく、演者自身の内面や身体が空間・時間・観客と相互作用する行為そのものが「パフォーマンス」として成立するという考え方に基づいています。

このような手法は、美術における「パフォーマンスアート」にも通じ、演者の行為そのものが表現の中心となる点で共通しています。また、観客の反応や参加を取り込みながら展開する演劇的実践では、アクティブパフォーマンスは「ライブ性」や「共創性」の核として注目されています。

本記事では、アクティブパフォーマンスの語源や発展の背景、具体的な手法、演劇教育や現代演劇における役割、そして未来への展望について、詳しく解説していきます。



アクティブパフォーマンスの起源と背景

アクティブパフォーマンスという用語は、20世紀の前衛演劇やパフォーマンスアートの流れの中で生まれた概念であり、俳優や演者が「演出された役割」から一歩踏み出し、能動的に創造的判断を下しながらパフォーマンスを行う姿勢を指すものです。

その背景には、以下のような歴史的潮流があります:

  • 即興演劇(Improvisation):1960年代以降、北米やヨーロッパで発展し、決められた台詞ではなく、その場での判断と反応によって演技を構築する演劇形態。
  • パフォーマンスアート:マリーナ・アブラモヴィッチやヨーゼフ・ボイスらによって展開された、美術と身体表現の境界を越える実践。
  • ポストドラマ演劇:テキスト中心の伝統的な演劇構造を離れ、身体、空間、行為が主導権を握る演劇的アプローチ。

こうした潮流の中で、演者は「台詞を読む存在」から「空間と状況をつくり出す存在」へと役割を変化させ、パフォーマンスの創造主体となる意識が高まっていきました。

また、アクティブパフォーマンスは、デジタル技術の進展によってよりインタラクティブな表現が可能になった現代において、「観客との共創」「現場の一回性」など、ライブパフォーマンスならではの魅力を再発見するキーワードともなっています。



アクティブパフォーマンスの特徴と手法

アクティブパフォーマンスの大きな特徴は、身体性、即興性、状況性の三点にあります。それぞれの観点から、その実践方法を紹介します。

1. 身体性:

アクティブパフォーマンスでは、演者の身体が「演技を行う道具」ではなく、「表現そのもの」として捉えられます。言葉に頼らず、姿勢、呼吸、動き、視線、沈黙といった非言語的要素が物語やテーマを伝える媒体となります。

2. 即興性:

台本や演出に依存せず、その場の空気、観客の反応、他の演者との関係に応じてパフォーマンスの内容が変化します。即興的判断に基づく行為は、観客に「いま・ここだけ」の特別な体験を与えます。

3. 状況性:

アクティブパフォーマンスでは、演技の枠組みを超えて、空間全体が「演出の一部」となります。劇場だけでなく、路上、公園、カフェ、ギャラリー、オンラインといった非劇場空間も舞台となりえます。

さらに、以下のような具体的技法が用いられることもあります:

  • 観客との対話:観客に話しかけたり、参加を促す演出
  • 選択肢の提示:展開を観客の選択に委ねるインタラクティブな構造
  • 反復・変奏:同じ動作や台詞を繰り返し、変化させながら意味を探る
  • 記録性の排除:映像記録を前提とせず、一期一会の体験を重視

このように、アクティブパフォーマンスは、「演じること」そのものを刷新し、演劇の根本的な問い直しを可能にする実践となっています。



教育・現代演劇における活用と未来の可能性

近年、アクティブパフォーマンスは、演劇教育やコミュニティ演劇、地域アート、ワークショップ、さらにはオンラインパフォーマンスの現場でも注目を集めています。

その主な応用例としては以下が挙げられます:

  • 演劇教育:台詞を覚えることに重点を置かず、即興や身体表現を通じて表現力・創造力を育てる。
  • ワークショップ形式の演劇づくり:参加者同士のやりとりを通じて、その場でストーリーや動きを構築。
  • 福祉・医療分野:認知症ケアや発達支援、セラピーなどにおける感情解放の手段として。
  • オンライン演劇・メタバース演劇:観客とのリアルタイムな双方向コミュニケーションによる展開。

さらに、AIやVR技術と組み合わせることで、演者とデジタル空間が共同で「即興の物語」を構築する新たなジャンルも生まれつつあります。

このように、アクティブパフォーマンスは現代演劇の最前線であり、俳優と観客の関係性、身体と言葉の使い方、空間と時間の再定義など、多角的な表現の可能性を切り拓く概念として、今後ますます重要な役割を担っていくと考えられます。



まとめ

アクティブパフォーマンスとは、俳優や演者が能動的・即興的に空間や観客と関わりながら展開する演劇的行為であり、「演じること」を越えて「その場で共に生きること」を目的とした表現形態です。

演劇の固定観念を解体し、身体性、即興性、状況性を重視するこの実践は、教育、福祉、デジタル演劇など、さまざまな分野で新しい創造の形を生み出しています。

今後も、アクティブパフォーマンスは舞台芸術の多様化と深化を象徴する重要なキーワードとして、演劇表現の未来を切り開いていくことでしょう。


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