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舞台・演劇におけるアップライトとは?

舞台・演劇の分野におけるアップライト(あっぷらいと、Upright、Position verticale)は、俳優や舞台上の対象物が直立した状態、または舞台美術・照明機材などが垂直に立てられている状態を指す演劇用語です。一般的な意味での「upright=直立した、垂直の」という意味を踏襲しつつ、身体の姿勢、動きの方向性、空間構成に関わる用語として、舞台の構造や演技プランに応用されます。

英語では「Upright」、フランス語では「Debout(立った状態)」「Verticale(垂直の)」などと表現され、身体性を重視する舞台芸術の文脈においては、特に俳優の“立ち姿”が意味する象徴性や力強さに関係づけられることが多いです。

アップライトという言葉は、演技指導や稽古の場面では「アップライトな姿勢で立って」「アップライトに構えて」など、重心の位置や身体の方向を意識させる言葉として使われる他、舞台美術や機材設置の際にも「アップライト状態で設置」「アップライトライト(縦置き照明)」という表現が見られます。

本記事では、アップライトの定義と演劇における使われ方、演技論や舞台構造との関係、さらに照明や美術面での応用まで、多角的に解説してまいります。



アップライトの定義と演技・身体表現における意味

アップライトは、舞台上で俳優が直立の姿勢をとっている状態、または垂直方向に向かっている動き・意識を示す言葉です。

身体表現の面では、以下のような意味合いを持ちます。

  • 演技姿勢の基本形:ニュートラルな状態(脱力でも構えでもない、フラットで開かれた姿勢)
  • 内面的な強さの表現:自信・尊厳・覚悟などを視覚的に象徴する
  • 対比の基準:「アップライト」に対して「リラックス姿勢」「ローボディ」「うずくまり」などの変化が際立つ

たとえば、シェイクスピア劇の登場人物が堂々とアップライトに立つ姿は、威厳や力を視覚的に表現する手法です。また、コンテンポラリーダンスの場面では、あえてアップライトを崩すことでバランスの不安定さや心理の揺らぎを演出することもあります。

つまり、立つという姿勢は、演技の“静”にして“動”でもあるという意味で、極めて重要な身体表現の起点なのです。



アップライトの舞台美術・照明・演出への応用

演技にとどまらず、アップライトという概念は舞台装置や照明にも応用されます。

■ 舞台美術における「アップライト設置」

舞台セット(たとえば板、柱、オブジェなど)を垂直に立てた状態を「アップライトに立てる」と表現します。背景幕を吊るのではなく床に立てる場合にも使われます。

■ 照明における「アップライト」

照明器具を床面から垂直に立ち上げる配置を指します。これにより、演者の下から上へのライティングが可能となり、陰影や威圧感を生み出す効果があります。

■ 演出の構図上の役割

舞台上の全体構成において、アップライトな要素=垂直性は、力・希望・信念などの象徴として機能します。対照的に「沈む」「倒れる」「横たわる」などの演出を強調するための比較軸にもなります。

このように、アップライトという概念は、構造的・視覚的な演出にも大きな影響を与えるものとなっています。



アップライトにおける俳優訓練と演技教育での意義

アップライトな姿勢を俳優が自然に取れるようにすることは、演技教育において非常に基本的かつ重要な訓練とされています。

■ 姿勢訓練としてのアップライト

アップライトな姿勢では、重心が中心軸に乗り、筋肉が最小限の力でバランスを保つ状態が理想とされます。これは、アレクサンダー・テクニークやフェルデンクライスなどの身体訓練法でも基本とされています。

■ 呼吸と声への影響

アップライトな姿勢によって肺が開き、呼吸が深くなり、発声の通りが良くなるため、台詞の響きや滑舌にも好影響があります。

■ 感情表現のベース

舞台上で感情を伝える際、最初に身体が見える=姿勢が感情を伝えるという観点からも、アップライトは俳優の内面と外面の結節点となります。

訓練においては「ただ立つ」「無理に背筋を伸ばす」こととは異なり、解放された状態で自然に立つ」ことが求められます。これこそが“真にアップライトな状態”なのです。



まとめ

アップライトとは、舞台・演劇において俳優の直立姿勢や、舞台装置・照明などの垂直な配置を指す重要な演出用語です。

俳優にとっては身体の基本軸となる姿勢であり、感情表現・発声・動きのすべての出発点となる一方で、舞台構成や演出の中でも垂直性が持つ象徴的な意味が活用されます。

今後もアップライトという言葉は、演技の精度・身体表現・演出構造の全てに関わる重要な概念として、多様な舞台現場で使われ続けていくでしょう。


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