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演劇におけるパフォーマンスリーディングとは?

舞台・演劇の分野におけるパフォーマンスリーディング(ぱふぉーまんすりーでぃんぐ、Performance Reading、Lecture-spectacle)は、テキスト作品を演者が声に出して朗読しながら演劇的要素を取り入れ、観客の想像力を喚起する上演形式を指します。語りと演技の中間に位置し、台本そのものをパフォーマンスとして提示することで、文字と言葉が持つ力を鮮明に浮かび上がらせます。この形式は、もともと文芸サロンや朗読会の伝統と、演劇における身体表現の要素が融合して誕生しました。観客は書かれたテキストを自ら目で追うのではなく、声と身体の動きを通じて言葉を体験し、言語の持つリズムや意味の重層性を深く味わうことができます。
演者は通常の朗読よりも大きくジェスチャーを交え、場面転換や登場人物の心情を身体的に示すことで、テキストを視覚的かつ聴覚的に豊かに伝達します。テクストへの忠実さと、舞台芸術としての表現性を両立させる点に特色があり、文字文化と口承文化の架け橋としても注目されています。

また、フランスでは19世紀末から演劇的朗読(Lecture-spectacle)の伝統が発展し、ジャン=コクトーやマルセル・デュシャンなど前衛的アーティストによって多様な試みが行われました。日本でも戦後、詩や小説の朗読会が活発化すると同時に、演劇人が台本の再発見を目的にパフォーマンスリーディングを採り入れ、現代詩の実験や社会派テキストの上演に用いられるようになりました。

こうした活動は単なる朗読にとどまらず、視覚的演出や音響効果、観客参加を取り入れることで、テキストが持つ社会的・政治的メッセージを強調し、演劇作品としての新たな可能性を切り開いています。現在では商業劇場からアートスペース、学校教育の場まで幅広く実践され、文学的価値と演劇的魅力を融合させた独自の上演形態として定着しつつあります。



起源と歴史

パフォーマンスリーディングの源流は、19世紀後半のヨーロッパにおける詩の朗読会や文学サロンに求められます。特にフランスでは、19世紀末からジャン=コクトーや〈Lecture-spectacle〉と呼ばれる形式が登場し、詩人自らが朗読しながらステージ上で身体表現を行う試みが行われました。その後20世紀前半にかけて、前衛劇運動の中で台本と身体表現を結びつける実験が進み、口述芸術と演劇の境界を曖昧にする上演形態が確立しました。

日本においては、戦後の詩人朗読会や小説家のリーディングイベントが契機となり、1960年代から70年代にかけて実験劇団が台本再解釈の手法として採用しました。特に前衛的演劇集団による上演では、既存のテキストに音楽や映像を組み合わせることで、言葉の持つ多層的な意味を浮かび上がらせる試みが行われました。

1990年代以降、大学の演劇学科やアートスペース、国際フェスティバルでもパフォーマンスリーディングに注目が集まり、文学と演劇の交差点として新たな表現領域が展開されるようになりました。



特徴と手法

パフォーマンスリーディングは、身体性を重視しながらも、テキストへの忠実な朗読を保つ点が大きな特徴です。演者は声のトーンや間(ま)、呼吸、視線、ジェスチャーを駆使し、テキストのリズムやニュアンスを観客に伝えます。

演出手法としては、舞台装置を最小限に抑え、朗読台のみを配置するシンプルな形態から、照明や音響を効果的に用いて詩的空間を創出するものまで多様です。観客の想像力を喚起するために、暗転やスポットライト、BGMなどを挿入し、テキストの句読点や改行を演劇的な間として扱う演出もあります。

さらに、観客参加型のパフォーマンスでは、観客がテキストの一部を朗読する、あるいはジェスチャーで物語の展開を示すなど、インタラクティブな要素を取り入れることで、従来の朗読会とは異なる没入感を生み出します。



現代における応用

現代の演劇シーンでは、商業演劇のプロモーションイベントや文学フェスティバル、教育プログラムなどでパフォーマンスリーディングが活用されています。出版社主催の作家朗読会においては、新刊発売時のプロモーション手法として採用され、テキストの魅力をダイレクトに伝える手段として定着しています。

また、社会派ドキュメンタリーテキストを題材にした上演では、テキストの社会的メッセージを強調し、観客の意識を喚起するツールとして機能します。学校教育では、文学作品の学習補助として、演劇的要素を取り入れたリーディングが生徒の理解を深める効果を上げています。

近年では、オンライン配信プラットフォームを通じたライブリーディングも増加し、遠隔地の観客ともリアルタイムで共有体験を行う試みが進んでいます。これにより、従来の劇場空間を超えた新たな上演形態が模索されています。



まとめ

パフォーマンスリーディングは、テキストと身体表現を融合させることで、言葉の持つ力を最大限に引き出す上演形式です。声と身体を通じて観客の想像力を喚起し、文字文化と演劇文化の架け橋として多様な領域で応用されています。

今後も、デジタル技術や観客参加型の手法が取り入れられることで、より豊かな表現と共有体験を生み出し、テキストの可能性をさらに拡張していくことが期待されます。

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