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演劇におけるフォーメーションリハーサルとは?

舞台・演劇の分野におけるフォーメーションリハーサル(ふぉーめーしょんりはーさる、Formation Rehearsal、Repetition de formation)とは、キャストが舞台上の所定の位置(フォーメーション)へ正確に移動し、その隊形を確認しながら演技やアンサンブルの動きを反復練習するためのリハーサルを指します。複数人数で構成されるシーンや群舞、合唱、ミュージカルのナンバーなどにおいて、俳優一人ひとりがどのタイミングでどこに立つべきか、誰とどのような関係性を保つべきかを細かく検証します。

この手法はバレエやコンテンポラリーダンスに端を発し、20世紀半ば以降にミュージカル演出でも取り入れられました。チュチュを揃えたバレエダンサーの円形隊形や、ミュージカルの群舞でのV字隊形など、視覚的インパクトと動線の滑らかさを同時に追求する技術が高度化し、演出家や振付家、舞台監督、照明デザイナーが一堂に会して確認を重ねる重要なステップとなりました。

フォーメーションリハーサルでは、俳優がフォーカルポイント(注目点)に視線を合わせ、照明や音響との同期を意識しながら動きを固めます。ステージマネージャーはフォーメーション図を用い、稽古場で動線をチェックしつつ、舞台装置や照明機材との干渉を避けるための調整も行います。こうして、本番での一糸乱れぬパフォーマンスを支える舞台づくりの基盤が築かれるのです。



フォーメーションリハーサルの起源と発展

フォーメーションリハーサルの起源は、19世紀末のバレエ団で行われた「グループワーク」の反復練習にあります。当時はダンサー数十名による大規模群舞が流行し、正確な隊形移動が求められました。20世紀初頭にはミュージカル演出家がこの手法を取り入れ、照明の切り替えポイントや舞台装置の開閉タイミングと合わせたリハーサルが行われるようになりました。

1950年代以降、ブロードウェイや西欧のオペラハウスで技術スタッフと振付師が共同でフォーメーション図を作成し、本番同様の速いテンポで反復練習を行うことで、稽古効率と精度が飛躍的に向上しました。日本でも1960年代の新劇運動を契機に、この手法が一般化し、現在に至るまで演出プロセスの定石となっています。



フォーメーションリハーサルの実践手法と効果

フォーメーションリハーサルでは、まずステージ図上に俳優の位置を記したマークを貼り、その上で動線をゆっくり確認します。次に実際の動きを音楽や効果音に合わせて繰り返し、タイミングや間合いを身体に覚え込ませます。照明スタッフはリハーサル中にスポットやエッジライトを実際に作動させ、俳優の立ち位置と光の当たり方をチェックします。

このプロセスにより、キャストは互いの位置関係を正確に把握し、舞台上のスペースを有効に活用できるようになります。また、動線と演技が一体化することで、観客には統一感のあるビジュアルイメージが強く印象づけられ、劇的効果が高まります。



現代演劇への応用と今後の展望

近年では、モーションキャプチャや3Dシミュレーションを用いてフォーメーションリハーサルを仮想空間上で事前に行う試みが進んでいます。これにより、稽古場に到着する前に動線の不整合を発見し、コストと時間を節約できます。

また、AIを活用した動線解析ツールによって、フォーメーションの最適化や衝突リスクの検出が自動化されつつあります。将来的には、VRヘッドセットを使ったリハーサル環境でキャストがリアルタイムに隊形を体験しながら修正できる「没入型フォーメーションリハーサル」が普及し、稽古効率と完成度はさらに向上するでしょう。



まとめ

フォーメーションリハーサルは、複数の俳優やダンサーが舞台上で正確に隊形を移動し、視覚的インパクトと演出効果を最大化するための反復練習手法です。バレエやミュージカルの群舞から発展し、現代ではデジタル技術やAIツールとの融合によって進化を続けています。今後も新たなテクノロジーを取り入れながら、舞台演出の基盤として重要性を増していくことでしょう。

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