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演劇におけるフラットとは?

舞台・演劇の分野におけるフラット(ふらっと、Flat、Plat)は、木製もしくは合板製の平らな舞台装置を指す専門用語です。壁面や背景として使われる「フラットパネル」とは異なり、空間を仕切る壁や扉、窓枠、装飾的な背景など、演劇空間におけるあらゆる〈縦置き可能な立面〉を制作するための基本構造素材です。軽量かつ組み立て・分解が容易なことから、劇場での移動や場面転換に適しており、様々な塗装やテクスチャ加工が施されることで、石壁や木造家屋、ファンタジー世界など、多彩な舞台美術を実現します。

フラットは、演出家や舞台美術家が脚本の世界観を視覚化する重要なツールです。塗装した面をそのまま背景に用いる「トゥルーフラット」と、ゴム製モールドやモールディングを貼り付けて立体感を出す「リーフラット」があり、劇場の規模や予算、作品の要求に応じて使い分けられます。

歴史的には、19世紀のヨーロッパ演劇で簡易な布張りフレームが舞台装置の主流でしたが、20世紀以降に合板フラットやライトウェイトフレームが開発され、現在のモジュール式フラットシステムへと発展。国内外のプロダクションで標準化され、劇場の技術スタッフやツールにも大きな影響を与えています。



フラットの歴史と発展

舞台装置としてのフラットは、18世紀のイングランドで「ペインテッドフライングスクリーン」として布製フレームに絵を描いた背景が始まりです。19世紀にはより強度のある木枠に布地を張った「エクストラライトフラット」が普及し、移動や輸送のコスト削減に寄与しました。

20世紀前半には合板技術が進化し、合板フラットが登場。これにより、フレームの強度と表面の平滑性が大幅に向上し、塗装や造形の幅が広がりました。戦後は劇場設備の近代化と共に、軽量アルミフレームと合板を組み合わせたライトフラットシステムが流行し、セットの組み立て時間を大幅に短縮しました。



フラットの構造と種類

現代のフラットは、〈スチールまたはアルミ製フレーム〉〈合板またはMDFパネル〉〈クランプやコネクター〉の三要素で構成されます。フレームはユニバーサルプロファイルと呼ばれる規格化された断面形状を持ち、パネルの取付ビス穴やコネクターの位置が統一されています。

主な種類として、塗装用に表面を平滑化した「トゥルーフラット」、石や煉瓦のレリーフを施した「リーフラット」、フラット同士を素早く連結できる「スピードコネクトフラット」があります。軽量性を重視する場合は発泡スチロールやウレタン製のクラフトフラットも使われます。



現代演劇における活用と今後の展望

近年はプロジェクションマッピング用のスクリーンフラットや、LEDラインを組み込んだ「ライティングフラット」が登場。セット自体が映像を投影するキャンバスとなり、場面転換をデジタル演出でスムーズに行うことが可能です。

また、3Dプリントによるモジュールパーツを組み合わせる「デジタルフラット」も研究されており、細かな装飾や複雑な形状を現場で即時にプリントして取り付ける未来型のワークフローが注目されています。これにより、フラットは今後ますます多機能化・即応性向上を遂げるでしょう。



まとめ

フラットは、舞台装置の基本構造である平板パネルを指し、歴史的には布張りから合板・アルミフレーム式へ進化しました。〈塗装用トゥルーフラット〉〈造形用リーフラット〉〈スピードコネクトフラット〉など種類が多様化し、現代ではプロジェクションマッピング用や3Dプリント対応のデジタルフラットが登場しています。軽量性とモジュール性を兼ね備え、今後も舞台美術の中核を担い続けることでしょう。

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