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演劇におけるフリーズフレームアクトとは?

舞台・演劇の分野におけるフリーズフレームアクト(ふりーずふれーむあくと、Freeze-Frame Act、Acte de capture d’image)は、シーンの特定ポイントで俳優が一瞬静止し、まるで劇場空間が「写真の一コマ」のように凍りついた状態を演出する技法です。観客の視線を強く引きつけ、瞬間の感情や関係性を強調すると同時に、時間の経過を一時停止させることで、物語の重要な意味やテーマを際立たせます。映画のフリーズフレーム編集に着想を得た手法ですが、舞台では俳優の身体表現、照明、音響、小道具の配置を組み合わせて〈生の空間〉をそのまま固定することで、観客に強い印象を残します。

フリーズフレームアクトは、1970年代の実験劇場でインプロビゼーション演劇と結びつきながら発展し、1980年代以降のコンテンポラリーダンスやパフォーマンスアートにも導入されました。演出家は脚本上のクライマックスや転換点でこの技法を配置し、俳優は静止ポーズを身体で固定するために〈引き締まった筋肉の制御〉や〈視線の固定〉を訓練します。照明デザイナーはその瞬間にスポットライトを絞り、音響スタッフが残響や静寂を演出することで、「凍結した時間」という視・聴覚のコントラストを強調します。

日本でも小劇場運動を通じて取り入れられ、大規模プロダクションの演出にも応用が広がっています。観客は、動的なドラマが一瞬にして静止することで、普段は意識しない登場人物の内面や人間関係の〈ねじれ〉に気づき、物語の深層にせまる体験を得ることができます。



フリーズフレームアクトの歴史と理論的背景

フリーズフレームアクトはもともと映画編集の手法である「フリーズフレーム」に由来します。1960年代のニュー・シネマ・ムーブメントで多用されたこの技法を、演劇に応用したのが発端です。1970年代の欧米実験劇場では、演出家が〈時間の解体〉をテーマにした作品で、俳優と舞台装置を同時に静止させる試みを行いました。

1980年代にはヨーロッパのコンテンポラリーダンスやパフォーマンスアートに発展し、身体の〈瞬間〉を凍結させることで動きと静止の両極を強調する表現として確立。日本では1990年代以降の小劇場運動で、演出家が即興演劇要素と組み合わせて導入し、現在に至るまで演出技法の一つとして定着しています。



舞台演出における技術的要素と実践方法

舞台上でフリーズフレームアクトを実現するには、〈俳優のポーズ固定〉〈照明の瞬間切り替え〉〈音響の残響・静寂演出〉〈小道具の配置〉〈カメラワーク的観点〉の五要素が密接に連動する必要があります。俳優は筋肉の制御と視線の固定訓練を重ね、所定のポーズを数秒間維持します。照明デザイナーはスポットライトをシーンの中心に集中させ、ほかの照明をカットすることで〈視覚的凍結〉を強調します。

音響では、通常の音楽や効果音をフェードアウトさせ、一瞬の静寂または持続残響のみを残す「サウンドフリーズ」を使用します。小道具スタッフは、俳優が保持するモノが落ちないように工夫し、ポーズ中の安全と美観を両立させます。リハーサルではタイミングをミリ単位で調整し、演出家がキューシートを緻密に管理します。



現代演劇への応用事例と今後の展望

近年は、〈プロジェクションマッピング〉と連動させた動的背景の静止演出や、〈VR/360度映像〉を観客に提供し、周囲すべてが凍結した舞台空間を没入的に体験させる試みが増えています。また、AI制御の照明システムを導入し、俳優のポーズ検出によって自動的に照明と音響が切り替わる「インテリジェントフリーズフレーム」も研究段階にあります。

将来的には、観客自身がARグラスを通じて〈フリーズフレーム〉ポイントを切り替えられるインタラクティブ演劇が実現し、演者と観客が〈静止〉をデザインする双方向的な舞台表現が広がることでしょう。没入感が深化し、時間の概念を再構築する新たな演劇体験が期待されます。



まとめ

フリーズフレームアクトは、俳優のポーズ固定と照明・音響・小道具を同期させ、舞台上の出来事を〈写真の一コマ〉のように凍結させる演出技法です。映画のフリーズフレームに由来し、1970年代の実験劇場から発展。現在ではコンテンポラリーダンスやパフォーマンスアート、AR/VR演劇にも応用され、時間の非線形性を体験させる手法として注目されています。今後はAIやインタラクティブ技術との融合によって、より没入的で双方向的な舞台表現が可能となるでしょう。

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