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演劇におけるフルボディパフォーマンスとは?

舞台・演劇の分野におけるフルボディパフォーマンス(ふるぼでぃぱふぉーまんす、Full-Body Performance、Performance corporelle integrale)とは、役者が身体全体を用いて感情や物語を表現する演技手法です。顔の表情や声だけでなく、身体各部の動き、呼吸のリズム、重心の移動、筋肉の緊張・弛緩、さらには全身を連動させたジェスチャーやダンス的要素を取り入れ、視覚的にもエネルギッシュにドラマを伝えます。演技の領域とダンスやパフォーマンスアートの領域を横断し、身体そのものを〈語り手〉とみなす点が特徴です。



フルボディパフォーマンスの起源と発展

フルボディパフォーマンスは、20世紀初頭の演劇改革運動に端を発します。スタニスラフスキー・システムの身体技法を基礎に、ジャック・ルコックが〈身体の詩〉として発展させたムーブメント・シアターが誕生。そこでは、身体を〈言葉を超えた表現装置〉と位置づけ、台詞を最小化し身体動作による物語表現を試みました。

1960?70年代のヨーロッパ実験劇場では、身体解剖学やコンテンポラリーダンス、パントマイムが融合し、演者の全身から生まれる〈生体リズム〉を舞台に持ち込むアプローチが発達。日本でも1980年代以降、小劇場から大型フェスティバルまで、俳優が〈身体全体〉を使う表現が注目され、現在に至るまで多様な形で進化しています。



フルボディパフォーマンスの実践手法と訓練

稽古では、まず身体感覚の開発を重視します。ヨガやコンタクトインプロビゼーション、アレクサンダー・テクニークなどを取り入れ、身体の〈軸〉と〈連動〉を強化。続いて、呼吸・声・動きを同時に用いた即興エクササイズで、身体各部の協調性を高めます。

具体的には、〈全身サイクルワーク〉として、頭から足先までを波状に動かす訓練、〈軸移動ドリル〉として中心軸をずらしながら感情曲線を身体でなぞるワーク、〈ダイナミックジェスチャー〉で空間を切り裂く動作のバリエーション強化などを実施します。それらを脚本シーンに応用し、セリフと身体動作のリズムを同期させて演技パフォーマンスへと昇華させます。



現代演劇への応用と今後の展望

近年は、VR/AR技術を連携し、俳優の〈身体表現〉をデジタル空間にリアルタイム投影する試みが進んでいます。また、モーションキャプチャーを活用し、身体各部の動きをデータ化して音響や照明に反映させる〈インタラクティブ舞台〉も研究段階に入っています。

さらに、AI解析で俳優の身体動作と観客の生理反応を連動させる「バイオフィードバック演出」が登場しつつあり、身体表現が〈観客の共感〉をより直接的に誘発する新たな方法論として注目されています。没入感を極限まで高めるフルボディパフォーマンスは、今後も演劇表現の最前線を牽引するでしょう。



まとめ

フルボディパフォーマンスは、身体全体を駆使して感情や物語を表現する演技手法です。ムーブメント・シアターやコンテンポラリーダンスを源流に、身体感覚訓練と身体動作の同期を通じて深化しました。現在はVR/AR、モーションキャプチャー、AIバイオフィードバックとの融合により、没入型でダイナミックな舞台体験を創出し続けています。

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