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舞台・演劇におけるインターミッションとは?

美術の分野におけるインターミッション(いんたーみっしょん、Intermission、Entracte)は、舞台や演劇、オペラ、コンサートなどの公演において、演目の途中に設けられる休憩時間を指します。上演の前半と後半の間に設けられるこの時間は、観客がリフレッシュするだけでなく、舞台裏での場面転換や演者・スタッフの準備を整えるためにも重要な役割を果たします。

英語では「Intermission」、フランス語では「Entracte(アントラクト)」と呼ばれ、いずれも「幕間」「中間の時間」という意味を持っています。演劇文化においては長く定着した慣習であり、19世紀のオペラ劇場や古典演劇でも頻繁に導入されてきました。

このインターミッションの時間は、観客にとってはトイレ休憩や軽食の購入、感想の共有などにあてられ、劇場空間の社交的・文化的側面を支える重要な時間とも言えます。

また、演目の構成上もインターミッションを基点に物語が大きく転調することが多く、演出における節目や緊張の解放の場としても用いられます。特に近年は、観客の集中力や身体的快適さに配慮したプログラミングが重視されており、演出プランの中にあらかじめ休憩時間を計画的に組み込む手法が一般的となっています。



インターミッションの歴史と語源

インターミッションの起源は、舞台芸術が宮廷文化の一部として発展していた時代にさかのぼります。特に17世紀から18世紀のバロック・オペラでは、長大な演目が主流であったため、観客の疲労を和らげるための休憩が自然と取り入れられていました。

語源はラテン語の「inter(間)」と「missio(送る、挿入する)」に由来し、「間に挟まれるもの」「中断」の意味を持ちます。フランス語の「Entracte」も同様に、「entre(間)」と「acte(幕)」の組み合わせから成る言葉であり、「幕と幕の間」を指します。

19世紀のヨーロッパでは、インターミッションが単なる休憩ではなく、舞台転換やオーケストラの準備時間として重要な役割を担うようになりました。特にヴェルディやワーグナーなどの大作オペラでは、インターミッションを挟むことで、観客に物語の構造的な転換点を明確に伝える役割も果たしていました。

日本では明治期以降、近代演劇の導入とともに「幕間(まくあい)」という表現で同様の概念が定着しており、歌舞伎では「幕の内弁当」という言葉に名残を留めています。



現代演劇におけるインターミッションの役割

今日の舞台芸術において、インターミッションは単なる中断ではなく、物語構造・観客体験・演出戦略の一部として機能しています。

多くの劇場では、上演時間が90分を超える演目には1回以上のインターミッションが設けられ、休憩時間は10分から20分程度が一般的です。オペラやバレエの公演では、より長い時間(30分程度)のインターミッションが設けられることもあります。

その間に観客は以下のような活動を行います:

  • 休憩・飲食:劇場内のロビーやカフェで軽食を取ったり、ドリンクを楽しんだりします。
  • トイレ休憩:特に年齢層が高い観客にとっては必須の時間です。
  • 感想の共有:同行者との感想交換や、SNSでの発信が盛んに行われる場面でもあります。
  • 劇場の経済活動:劇場売店やギフトショップの利用が活発になり、収益面でも重要な時間帯となっています。

一方で、舞台裏では以下のような準備が進行しています:

  • 舞台転換:大道具・小道具の配置換え、大規模な照明変更などが行われます。
  • 演者のメイク・衣装替え:キャラクターの変化や時間経過を演出するための重要な準備時間となります。
  • 演出の調整:場合によっては前半の舞台の出来を受けて、後半に向けた演出上の微調整が行われることもあります。

このように、インターミッションは観客・演者・スタッフ全体にとっての「呼吸の時間」であり、公演の完成度を高めるための戦略的要素となっています。



演出と物語構成における活用

演出家にとって、インターミッションの配置は物語構成上の大きな選択です。観客の興味を持続させながら、ストーリーの転換点やクライマックスへの導入としてインターミッションを設けることで、劇的効果を高めることが可能となります。

たとえば次のような展開が典型的です:

  • 前半:導入・葛藤インターミッション後半:展開・解決
  • 前半:伏線の提示インターミッション後半:伏線の回収と転倒

一部の実験的な舞台では、インターミッション中に観客が舞台上を自由に歩いたり、演者がロビーに現れて観客と交流したりすることで、境界を越えた体験型演劇の一部として組み込まれる場合もあります。

また、近年のトレンドとして、スマートフォンアプリを活用して休憩中に舞台の裏側映像やキャストインタビューを配信するなど、インターミッションの時間を「情報体験の場」に変える工夫も行われています。

一方、90分以内で完結する「ノーインターミッション」の公演も増加しており、観客の集中力やテンポ感を重視したスタイルが一定の支持を集めています。公演時間と観客体験のバランスをどう取るかは、今後の舞台芸術において重要なテーマと言えるでしょう。



まとめ

インターミッションは、単なる「休憩時間」にとどまらず、舞台表現の構成要素として物語や演出に深く関与する重要な時間です。

観客にとっては心身を整え、舞台に新たな気持ちで向き合う時間であり、演出家にとっては構成を際立たせる「節目」として機能します。

今後も、演劇体験をより豊かに、深くするための工夫の一つとして、インターミッションの意義と可能性は拡がり続けていくでしょう。


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