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舞台・演劇におけるインタラクティブパフォーマンスとは?

美術の分野におけるインタラクティブパフォーマンス(いんたらくてぃぶぱふぉーまんす、Interactive Performance、Performance interactive)は、観客が作品に対して能動的に関与することで成立する芸術表現の一形態を指します。従来の一方向的な舞台表現とは異なり、観客の行動や反応が作品の展開や構造そのものに影響を与えるという特性を持ちます。

この概念は美術においては1960年代のハプニングやパフォーマンス・アートに起源を持ち、演劇やダンスなどの舞台芸術においては観客参加型の演出として進化を遂げてきました。英語の “Interactive Performance” は直訳で「対話的な上演」や「相互作用的な演技」を意味し、フランス語では “Performance interactive” と表記されます。

インタラクティブパフォーマンスは、近年テクノロジーの発展とともに大きな注目を集めています。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、センサー技術やAIと連動することで、観客一人ひとりが作品の一部として体験し、ストーリーを変化させるような新たな表現が可能となっています。

また、舞台芸術の分野においては、観客の選択が劇の流れを変えるマルチエンディング形式の演劇や、観客が舞台空間を自由に移動しながら登場人物と対話できる没入型演劇(イマーシブシアター)など、多彩な形で展開されています。これらは単なる演出の工夫にとどまらず、観客と作品との関係性そのものを再構築する、極めて現代的かつ実験的な試みといえるでしょう。



インタラクティブパフォーマンスの歴史と展開

インタラクティブパフォーマンスの源流は、20世紀初頭の前衛芸術やダダイズム、フルクサスなどの運動にまで遡ることができます。これらは、芸術における「作者」と「鑑賞者」の境界を曖昧にし、作品の成立に観客の関与を求める点で、後のインタラクティブな表現の基盤を形成しました。

1960年代のアメリカでは、アラン・カプローによる「ハプニング」が注目を集め、観客参加型の芸術表現が本格化しました。演劇においても、リチャード・シェクナーなどが提唱した「環境演劇(Environmental Theatre)」では、舞台と客席の境界を取り払い、空間全体を演劇の場とする構造が導入されました。

1980年代から1990年代にかけては、コンピューター技術の発達とともにデジタルアートやメディアアートの一分野として、観客がセンサーや装置を通じて作品に反応する「インタラクティブ・アート」が誕生します。この流れを受け、舞台芸術でもデジタルメディアを用いた参加型の上演が模索されるようになりました。

2000年代以降は、イマーシブシアターやオルタナティブシアターの中で、観客が能動的に参加する上演形態が多く登場しました。代表的な例として、イギリスのPunchdrunkによる『Sleep No More』などが挙げられます。



舞台芸術における特徴と実践

インタラクティブパフォーマンスの舞台芸術における最大の特徴は、「観客の存在が作品の展開に影響を与える」点にあります。これにより、演者と観客の関係は対等あるいは相互補完的なものへと変化します。

具体的な事例としては、次のような形式が挙げられます:

1. マルチルート演劇
観客が物語の進行に関与し、複数の結末へと導かれる構成です。観客が選んだ選択肢によって異なる展開や結末が用意されており、毎回異なる体験が可能になります。

2. センサー/テクノロジー連動型演出
観客の動きや声、位置情報などをセンサーで感知し、それに応じて照明や音響、映像が変化する演出です。近年ではAIやVR技術を組み合わせた試みも登場しています。

3. 俳優との対話を含む上演
観客が登場人物に直接話しかけたり、質問したりすることで、物語の展開やキャラクターの行動に影響を与えるスタイルです。即興演技と脚本の柔軟性が求められます。

4. オープンワールド型舞台
舞台空間全体を「開かれた世界」とし、観客が自由に移動しながら個別に物語を体験する形式です。各場所で異なるストーリーが展開され、全体像をつなぎ合わせるのは観客自身の選択と想像力です。



現在の動向と今後の可能性

現代において、インタラクティブパフォーマンスは演劇だけでなく、エンターテインメント全般に広がりを見せています。たとえばテーマパークのアトラクション型演劇、ARを活用した街歩き型の劇場体験、オンライン上での参加型公演など、多様な形態が存在しています。

特にCOVID-19以降、オンライン演劇が急増したことで、Zoomや専用アプリを使った観客参加型パフォーマンスが注目されるようになりました。こうした技術との連携によって、舞台芸術の可能性はますます広がっています。

将来的には、メタバース内での演劇や、AIが観客の表情や反応を分析して即時に脚本を変えるような超高応答型の上演が登場する可能性もあります。これにより、観客は単なる「見る人」から「共創者」へと役割を変えていくことでしょう。

その一方で、インタラクティブ性が強くなるほど、作品全体の構成力や俳優の即興対応能力、観客のリテラシーも求められます。演出家や制作者にとっては、新たな挑戦であると同時に、大きな創造的可能性を秘めた分野といえます。



まとめ

インタラクティブパフォーマンスは、観客の参加や選択が作品の進行に直接影響を与える、革新的な舞台芸術のスタイルです。

その起源は前衛芸術にまでさかのぼりますが、今日ではデジタル技術や演出手法の進化により、かつてない体験型演劇が可能となっています。これにより、演劇の「見る・見られる」という関係性が根本から問い直され、観客と作品との関係性が再定義されています。

今後も、テクノロジーと演劇の融合により、より深く没入できる、共創型の舞台体験が多く誕生していくことが期待されます。


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