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舞台・演劇におけるインテンシブリハーサルとは?

美術の分野におけるインテンシブリハーサル(いんてんしぶりはーさる、Intensive Rehearsal、Répétition intensive)は、限られた期間内で集中的に行われる稽古(けいこ)形式を指します。これは、通常よりも長時間かつ高頻度で行われるリハーサルのことで、舞台・演劇作品の完成度を短期間で飛躍的に高めることを目的としています。

この手法は、主に本番が迫っている段階や、短期間で作品を立ち上げる必要がある状況下で導入されることが多く、特に集中力と継続的なエネルギーが求められます。演出家や俳優、スタッフが一丸となって一つの作品に没頭し、連続的にシーンの再構築や動線の確認、演技の精度を高めていく工程となります。

英語表記では「Intensive Rehearsal」、フランス語では「Répétition intensive」と表記され、どちらも「集中的な稽古」や「強化されたリハーサル」を意味します。一般的な稽古との大きな違いは、単なる反復ではなく、明確なゴールに向けた密度の高い稽古である点にあります。

インテンシブリハーサルは、舞台作品の仕上げに向けた最終調整として機能するほか、新作や再演作品のキャスト入れ替え時、短期公演の準備など、多様な演劇現場で導入される重要な手法の一つです。



インテンシブリハーサルの歴史と背景

リハーサル(稽古)の歴史は古く、紀元前のギリシャ演劇においても本番前の準備が行われていた記録がありますが、インテンシブリハーサルという明確な形が定着したのは20世紀以降のことです。

特に第二次世界大戦後の現代演劇の興隆期、演劇制作のスピードと予算の制約が厳しくなる中で、短期間で成果を出す必要性が高まりました。この中で欧米を中心に、短期集中型のリハーサル体制が確立され、それが「インテンシブリハーサル」と呼ばれるようになりました。

日本では、1960年代以降のアングラ演劇や実験劇場において、限られた資源と時間の中で上演される舞台作品が増えたことにより、短期集中の稽古が自然発生的に広まっていきました。その後、商業演劇でも一定の成果が認められたことで、現在では規模の大小を問わず一般的な稽古法の一つとして浸透しています。



特徴とメリット・デメリット

インテンシブリハーサルは、通常の稽古と比較して短期間で作品の完成度を高めることができる点が最大の利点です。その主な特徴は以下の通りです:

  • 高密度の作業時間:1日あたり数時間~丸1日に及ぶリハーサルが複数日連続で行われます。
  • 集中力の維持:演者・スタッフともに集中を切らさず、一つの作品に没入することで深い表現へとつながります。
  • 連続性のある構築:時間を空けずに稽古が進むため、修正や演出の方向性が一貫しやすいです。

その一方で、インテンシブリハーサルにはいくつかの課題も伴います。

  • 体力・精神的負担:長時間労働による疲労の蓄積、ストレスの増加などが生じやすくなります。
  • スケジュール調整:参加者全員の予定を連続して確保する必要があるため、調整が困難です。
  • 表現の硬直化:詰め込みすぎることで、即興性や柔軟な解釈が失われる恐れもあります。

したがって、インテンシブリハーサルを導入する際には、適切な休憩時間の確保や、心理的ケアの配慮などが不可欠です。特に俳優の身体的コンディションとメンタルの維持は、作品全体の質に直結するため慎重な運営が求められます。



現代演劇における役割と今後

現代の演劇制作において、インテンシブリハーサルは、限られたリソースの中で最大限の成果を出すための重要な戦略です。

特に、地方公演やツアー形式の演劇では、移動前にまとめてリハーサルを終える必要があり、この方式が非常に有効です。また、複数の演目を交互に上演する「レパートリーシステム」を採用する劇団でも、作品ごとに短期間で集中稽古を行うことが一般化しています。

近年では、リモートワークやオンライン稽古との組み合わせによって、分散型インテンシブリハーサルという形式も登場しています。たとえば、初期段階をオンラインで進め、最終調整のみを集中して対面で行う手法です。

さらに、インテンシブな稽古を通じてチームの一体感を高める「チームビルディング効果」も注目されており、企業研修や教育現場でも演劇手法を活用するケースが増えています。

このように、インテンシブリハーサルは単なる技術的手段を超えて、創造性と効率性の両立を実現する舞台芸術の核心的なプロセスとして、今後もさらなる活用が期待されています。



まとめ

インテンシブリハーサルとは、短期間に集中して行う稽古方法であり、現代演劇において作品の完成度を飛躍的に高める有効な手段です。

その利点は時間効率の良さや深い没入体験にありますが、過度な稽古による負担には注意が必要です。今後はテクノロジーとの連携や、多様な演劇形式への応用を通じて、より柔軟で効果的な稽古スタイルとして発展していくことでしょう。


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