ビジプリ > 舞台・演劇用語辞典 > 【インフィニットスクリーン】

舞台・演劇におけるインフィニットスクリーンとは?

美術の分野におけるインフィニットスクリーン(いんふぃにっとすくりーん、Infinite Screen、Écran infini)は、視覚的・空間的な限界を超える演出効果を実現するために設計された、無限の奥行きや連続性を感じさせる映像・舞台背景の技術概念を指します。これは物理的な「スクリーン(幕)」に留まらず、映像投影や拡張現実(AR)、デジタル背景などを組み合わせて、舞台空間に無限性や幻想性を持たせる手法です。

舞台・演劇におけるインフィニットスクリーンは、観客に対して「空間がどこまでも続いているように見える」錯覚を与え、演出の世界観を強化します。これは単なる映像効果ではなく、照明設計や舞台美術との連携によって、空間全体を「終わりのない」舞台として演出するための美術的・演劇的装置です。

英語表記では“Infinite Screen”、フランス語では“Écran infini”とされ、舞台芸術、映画、インスタレーションアートなどで用いられる用語です。とりわけ演劇においては、物理的制限のある舞台に、仮想的な奥行きや展開の広がりを与える手段として注目されています。

近年では、プロジェクションマッピングやLEDパネル、360度投影技術などの進化により、インフィニットスクリーンの演出表現はよりリアルかつ没入的になりつつあります。観客はまるで舞台の中に入り込んだかのような体験を得ることができ、舞台芸術の可能性を大きく広げています。



インフィニットスクリーンの歴史と進化

インフィニットスクリーンの概念は、古くはルネサンス時代の遠近法的舞台背景にまでさかのぼることができます。イタリアの舞台美術家によって発展した遠近法は、平面上に奥行きを錯覚させる技術であり、まさに「無限に続く背景」の先駆けとも言える演出方法でした。

19世紀後半には、舞台装置の機械化や照明技術の発展に伴い、深い奥行きと立体感を強調するセットデザインが主流となり、これが現代のインフィニットスクリーンの原点となります。

20世紀にはいり、特に1960年代以降の実験演劇やポストモダン演劇の台頭によって、映像やスクリーンを使った舞台演出が盛んになりました。この流れの中で、「舞台の壁を取り払う」「現実と虚構を曖昧にする」ことが演出上のテーマとなり、映像と舞台が融合した新しい空間表現が模索されるようになります。

21世紀に入り、プロジェクションマッピングやデジタルパネル、VR/AR技術の普及により、インフィニットスクリーンの構想はより現実的な演出装置として定着しました。特に商業演劇やミュージカルの分野では、映像が物理的空間を拡張する演出効果が広く導入され、多くの観客を魅了しています。



インフィニットスクリーンの演出技法と構造

舞台においてインフィニットスクリーンを構成するためには、映像技術・照明設計・舞台美術・音響などの多分野の要素が連動している必要があります。以下にその主要な技法を示します。

  • LEDウォールやプロジェクターによる映像投影:高解像度の動的映像を使用して、視覚的に奥行きを持つ空間を創出します。
  • フレームレスな背景構成:スクリーンの「端」が見えないように設計され、無限に広がるような錯覚を強調します。
  • 遠近法と光の演出:舞台照明を用いて空間の広がりや立体感を強調し、視覚的効果を補完します。
  • AR・VRとの連動:観客の視点に合わせて変化する空間を演出することも可能です。

こうした技術は、物語の世界観に合わせて柔軟に変化させることができ、抽象的・幻想的な舞台背景からリアルな風景まで多彩な演出が可能です。また、俳優の動きとシンクロした映像演出により、観客の没入感は飛躍的に高まります。

演出家にとっては、単なる視覚効果としてではなく、「場面転換」や「心理的空間の可視化」としても活用できる強力なツールとなっています。



現在の舞台活用と未来への展望

今日、大規模なミュージカルや国際的な舞台公演では、インフィニットスクリーンの導入が一般的になりつつあります。たとえば、ブロードウェイやウエストエンドで上演される作品では、舞台背景のほぼすべてがLEDや映像パネルで構成されるケースも珍しくありません。

また、日本国内においても、宝塚歌劇団や2.5次元舞台などで、空間を変幻自在に操る演出として活用が進んでいます。

インフィニットスクリーンの登場によって、従来の「限られた舞台空間」という制約は大きく変化し、演劇はより映像芸術との融合が進んでいます。これにより、観客にとっての没入体験は飛躍的に高まり、演劇が持つ「その場で生まれる奇跡」の力が新たな形で増幅されているといえるでしょう。

今後、AIやセンサー技術との連携によって、リアルタイムに観客の反応に応じた映像変化を取り入れることも考えられ、インフィニットスクリーンは「感応する舞台空間」としてさらなる進化を遂げる可能性を秘めています。



まとめ

インフィニットスクリーンは、舞台演出において「空間の限界を超える」ことを目的とした表現技法であり、映像技術や照明、美術の融合によって、無限の奥行きや幻想的な世界を観客に提示することができます。

その歴史は古典美術の遠近法に始まり、現代ではデジタル技術の進化によって新たな表現手段として確立されています。今後も舞台芸術とテクノロジーの接点として、演劇の可能性を大きく広げていくことでしょう。


▶舞台・演劇用語辞典TOPへ戻る



↑ページの上部へ戻る

ビジプリの印刷商品

ビジプリの関連サービス