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舞台・演劇におけるインフィニティシアターとは?

舞台・演劇の分野におけるインフィニティシアター(いんふぃにてぃしあたー、Infinity Theater、Théâtre de l'infini)は、舞台と観客の関係性を再構築する革新的な空間設計や演出手法を特徴とする、現代演劇における概念的・実験的な演劇形式を指します。名称に含まれる「インフィニティ(無限)」という言葉が象徴するように、物理的な舞台の制限を超え、演者と観客の間に拡張された関係性を築くことを目的としています。

この用語は固定された定義を持たず、空間の無限性、視覚や感覚の境界の消失、演劇体験の拡張性といった要素を内包しています。従来のプロセニアム型舞台とは異なり、舞台の「奥行き」や「境界」を意識させず、観客が無限の空間に包まれているかのような感覚を生み出す点に特徴があります。

また、最新の照明技術やプロジェクションマッピング、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)などのテクノロジーと融合することで、観客が実際に物理的空間を超越したかのような演劇体験を得ることもあり、メディアアートやインスタレーションとの境界も曖昧です。

近年では、デジタル化が進むなかで観客参加型・没入型の演出が求められるようになり、インフィニティシアターは、舞台美術や演出概念において新たな表現領域として注目を集めています。芸術的な実験としてだけでなく、商業演劇やテーマパーク型アトラクションにも応用されることもあります。



インフィニティシアターの起源と背景

「インフィニティシアター」という用語が広く用いられるようになったのは近年のことですが、その根底にある思想や演出手法は、20世紀以降の現代演劇の流れと深く関係しています。特に1960〜70年代の環境演劇(Environmental Theater)ポストドラマ演劇の影響を強く受けていると考えられます。

環境演劇では、観客席と舞台の境界が取り払われ、空間全体が「演劇の場」として再定義されました。この流れにおいて、観客があたかも無限の空間に存在するように感じられる演出は、「無限性」をテーマとした演劇空間の萌芽ともいえるものでした。

さらに、メディアアートやテクノロジーが演劇に導入されるようになると、「インフィニティシアター」というコンセプトはその名称にふさわしい形で具体化されていきました。特にLEDによる無限鏡(Infinity Mirror)の効果を用いた舞台セットや、無限空間を表現するプロジェクションの技術が進化したことで、視覚的にも「インフィニティ(無限)」を実感させる演出が可能となりました。



インフィニティシアターにおける演出手法と空間設計

インフィニティシアターの最大の特徴は、演出と空間設計の融合によって「観客が空間の制約から解き放たれる感覚」を演出する点にあります。以下に代表的な手法を挙げます。

1. 境界の消失
舞台と客席の物理的な境界を排除し、観客が演者と同じ空間を共有するように配置されます。壁面や床面が鏡面仕上げや映像で覆われることも多く、視覚的に空間の奥行きを無限に感じさせます。

2. テクノロジーの活用
プロジェクションマッピングやLED照明を用いた演出により、空間全体を光で変容させ、時間や物理法則を超越したような演劇体験を生み出します。ARグラスやVRゴーグルを通して個別に異なる舞台空間を体験させる場合もあります。

3. 参加型・移動型演出
観客が舞台を歩きながら、ストーリーを追体験する形式の演出(イマーシブ・シアター)とも結びつきます。これにより、観客は自らが舞台の一部であるかのような没入感を得ます。

4. 抽象的・象徴的な舞台美術
空間的な要素を抽象化することで、物語の舞台がどこなのかを特定させず、「無限の宇宙」「夢の中」「内面世界」といった象徴的なイメージを観客に喚起させる演出がなされます。



現代における応用と可能性

インフィニティシアターの概念は、演劇だけでなく展示空間、商業施設、メディアアートなど多様な分野に応用されています。たとえば、東京やロンドン、ニューヨークでは、没入型展示(Immersive Exhibition)として、ミラーやLED、映像を使った「無限空間」のインスタレーションが人気を集めています。

演劇においても、観客のリアルタイムの反応や移動に応じて内容が変化するインタラクティブ演出との親和性が高く、AIやセンサーを取り入れた新しい試みが展開されています。これは、演劇の再定義という意味でも非常に重要な動きです。

また、パンデミック以降、劇場の在り方が見直される中で、密を避けつつ豊かな演劇体験を提供する空間として、「インフィニティシアター」のような広がりと柔軟性を持つ空間設計が再評価されつつあります。

演劇教育の場面でも、学生たちが「無限空間」を意識した演出や空間作りを学ぶことで、創造力と空間認識力を同時に育むアプローチが導入されるケースが増えています。



まとめ

インフィニティシアターとは、物理的・心理的な境界を取り払い、観客に「無限の空間体験」を与える舞台演出および空間構成の概念です。

その成り立ちは現代演劇の環境演劇やメディアアートと密接に関わっており、近年のテクノロジーとの融合によってさらに進化を遂げています。

「演劇は舞台上で行われるもの」という常識を超え、観客自身が舞台の一部となることで、演劇の枠を超えた表現として未来の芸術文化を切り拓く可能性を秘めた概念と言えるでしょう。


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