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舞台・演劇におけるオーディションとは?

美術の分野におけるオーディション(おーでぃしょん、Audition、Audition)は、演劇、舞台、映画、音楽、ダンスなどの芸術活動において、特定の作品や役にふさわしい出演者や演奏者を選出するために行われる公開または非公開の選考試験を意味します。特に舞台・演劇の分野では、俳優が脚本の一部を演じる、自己紹介を行う、課題演技に取り組むなどの形式で自らの演技力を審査員に対して披露し、その適性を見極められる重要な機会となります。

オーディションは、英語では「Audition」、フランス語では「Audition(オディスィオン)」と綴られ、いずれの語源も「聞くこと」「聴取すること」という意味を持っています。これは、演技や音楽の審査が視覚だけでなく声や音、表現の「聴き取り」に大きく依存していた歴史的背景を反映しています。

今日では、演出家やプロデューサー、キャスティングディレクターによって構成された審査チームが、演者の技術的能力、人物的魅力、演出意図との適合性などを総合的に評価し、キャストを決定します。役の獲得を目指す俳優にとって、オーディションはまさに勝負の場であり、個性とスキルを的確に表現する準備と戦略が求められます。

また、現代におけるオーディションの形式は多様化しており、対面形式だけでなく、オンラインでのビデオオーディションや、SNSでの応募、エージェント経由の招待型オーディションなども一般的になっています。加えて、舞台芸術においては、配役にとどまらず、劇団への入団やカンパニーのプロジェクトへの参加者募集という意味でも活用されており、舞台人のキャリアにおいて不可欠な制度となっています。

そのため、オーディションは単なる選考の手段ではなく、演者と演出側との最初の出会いの場であり、同時に芸術的な対話と可能性の発見の場でもあります。



オーディションの歴史と概念の発展

オーディションという制度の起源は、古代ギリシャやローマにおける演劇の上演においてもその萌芽が見られますが、現代的な意味でのオーディションが定着するのは、19世紀〜20世紀にかけての西洋演劇の職業化とともに発展していきました。

特に20世紀初頭のブロードウェイやロンドンのウエストエンドでは、大規模な演目を支えるために俳優やダンサーを定期的に募集する必要性が高まり、組織的なオーディション制度が確立されていきました。映画業界の勃興により、スター俳優の発掘手段としても機能し始めます。

日本においては、戦後の新劇運動やテレビ・映画の普及とともにオーディションという形式が導入され、1960年代以降には劇団や芸能事務所が新人発掘の手段としてオーディションを定期的に開催するようになります。舞台演劇においては、文学座、青年座、劇団四季、無名塾などが代表的な実施団体として知られています。

21世紀に入り、YouTubeやZoomなどの登場により、「非対面・非中央集権型」の選考方式が普及し、地方在住者や国際的な応募者も容易に参加できるようになりました。また、俳優の選考において、多様性(ダイバーシティ)やジェンダー表現への配慮が求められるようになり、評価基準やオーディションのあり方にも変化が生まれています。



実際のプロセスと求められる要素

オーディションの形式は、作品や主催者によってさまざまですが、一般的には以下のようなステップを経て実施されます。

  • 応募(書類・映像審査):履歴書、プロフィール、ポートフォリオ、ボイスサンプルなどを提出。
  • 一次審査(実技審査):課題台詞、自由演技、即興、歌唱・ダンスなど。
  • 二次審査(面接・ディスカッション):演出家やプロデューサーとの面談。芸術的意図や人物性の確認。
  • 最終審査・合格発表:実際の演出意図に基づいた演技の確認。契約条件などの提示。

ここで求められるのは、単なる演技力だけでなく、役に対する理解力、対応力、柔軟性、そして人間的魅力です。特に舞台芸術の場合、長期にわたる稽古・公演を前提とするため、共演者や演出家との協働姿勢が重視される傾向にあります。

また、近年では「オープンコール」と呼ばれる、年齢・性別・経歴を問わない公募型のオーディションも増えており、新人俳優や舞台未経験者にも門戸が開かれています。

一方で、所属事務所経由の「クローズド・オーディション」や、書類選考のみで配役が決まる「キャスティング型」も存在しており、透明性や公平性がしばしば議論の的となることもあります。



現代における意義と課題

舞台・演劇におけるオーディションは、単なる配役決定の手段を超えて、演者の自己表現と出会いの場としての役割を果たしています。

演出家にとっては、自分の芸術的ビジョンを体現できる人物を発見する場であり、演者にとっては自分の個性を他者に伝える場でもあります。また、近年の演劇教育では、オーディションの準備や模擬練習がカリキュラムに組み込まれ、自己プロデュース能力やコミュニケーション能力の涵養も求められるようになっています。

しかし同時に、以下のような課題も指摘されています。

  • 過度な競争:一つの役に対して多数が応募するため、精神的ストレスや自己否定感が生まれやすい。
  • 演者の消費化:演技力ではなく話題性や外見で判断されるリスク。
  • 審査の透明性:基準が明示されないまま不合格になることへの不信感。

これらを解決するためには、フェアな審査体制の構築と、演者の尊厳を守る姿勢が制作側に求められます。また、演者側もオーディションに落ちることを成長の機会と捉え、自己理解を深めるプロセスとして活用するマインドが重要です。



まとめ

オーディションとは、舞台や演劇作品において適切な演者を選出するための選考制度であり、芸術的表現とキャリア形成の両面において極めて重要な機能を果たしています。

その起源は古く、今日ではテクノロジーの発展とともに多様な形式が生まれ、表現者にとっての自己実現の場となっています。一方で、制度的課題も抱えており、今後はより開かれた、創造的で人間的な選考の場として進化していくことが期待されています。

演者と演出家、そして観客をつなぐ最初の出発点であるオーディション。それは舞台芸術における創造の入口であり、未来の名作を生み出す源泉でもあるのです。


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