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舞台・演劇におけるオープンエアパフォーマンスとは?

美術の分野におけるオープンエアパフォーマンス(おーぷんえあぱふぉーまんす、Open-air Performance、Spectacle en plein air)は、主に屋外で実施される演劇やパフォーマンス芸術の形式を指します。劇場のような閉鎖された空間ではなく、公園、広場、歴史的建造物の前、野外ステージなど、自然や都市の空間を舞台に見立てて実施される点が大きな特徴です。

英語表記の “Open-air Performance” は文字通り「野外での上演」を意味し、フランス語では “Spectacle en plein air(スペクタクル・アン・プランネール)” と呼ばれ、野外芸術フェスティバルや歴史的演劇の再現などで盛んに用いられています。都市空間とアートの融合、観客との新たな関係性の模索といった観点から、近年ますます注目を集めている表現形式です。

観客との距離感の変化や、音・光・空間といった環境的要素の直接的な影響を取り込みながら、よりダイナミックで即興的な要素を持つのがこの形式の魅力です。特に現代の舞台芸術においては、場所性を重視した「サイトスペシフィック・パフォーマンス(site-specific performance)」と重なり合う概念として発展しており、伝統と革新の両面を併せ持っています。

また、オープンエアパフォーマンスは、地域社会への開放性やアクセスの良さから、コミュニティとの結びつきを強める文化活動としても評価されています。入場無料や通りすがりでも観覧できるという特性から、劇場文化に馴染みのない人々にも演劇を届ける手段となっており、現代演劇における「公共性の再構築」の視点からも重要な役割を果たしています。



オープンエアパフォーマンスの歴史と起源

オープンエアパフォーマンスの起源は、実は演劇の歴史そのものと深く関わっています。古代ギリシャの野外円形劇場「テアトロン」に始まり、ローマ時代にも同様の野外劇場が建設され、祭祀や祝祭の一部として演劇が行われていました。

中世ヨーロッパでは、宗教劇や道化芝居(ファース、モラルプレイ)が広場や市の通りで行われており、これらはまさにオープンエアパフォーマンスの原型です。聖書の物語を市民にわかりやすく伝えるため、移動型舞台(ページェント・ワゴン)で行われた「巡回劇」は、現代のストリートシアターや路上劇に大きな影響を与えています。

17世紀以降、劇場建築が整備され、屋内での上演が一般化するにつれ、野外上演は一時的に下火となりましたが、20世紀に入ると、特に1960〜70年代の現代演劇運動や野外フェスティバルの普及により、再び注目を集めるようになります。特にヨーロッパでは「アヴィニョン演劇祭」や「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」などが、オープンエア演劇の復興に大きな役割を果たしました。

日本においても、能の「薪能」や江戸時代の「辻芝居」、現代における野外劇団の活動など、オープンエアの形式は文化的背景の中に根強く存在しています。



オープンエアパフォーマンスの特徴と演出上の工夫

屋外で行うという特性上、自然環境との共存がオープンエアパフォーマンスの最大の特徴です。照明、音響、舞台装置に制限がある一方で、自然光、風、木々、建物などが舞台美術の一部として活かされる点が、演出家やパフォーマーにとっては創造的な挑戦となります。

以下に代表的な特徴を挙げます:

  • 開放性と公共性:観客が自由に出入りできる環境で行われることが多く、地域住民や偶然通りがかった人々も観劇に参加できる。
  • 非日常の創出:都市のなかに突如として現れる劇的空間が、日常を揺さぶる体験を提供する。
  • 可動性と柔軟性:移動式ステージや仮設舞台を用いることで、場所に合わせた即興的演出が可能。
  • 天候や環境の影響:雨、風、日差しなどによる演出の変更やアクシデントが発生することもあるが、それも演劇の一部とされる。

また、演出家は音響効果や照明装置に制限があるため、身体性・視覚性に富んだ表現や、音楽・声を通じた伝達技法を工夫して取り入れます。マイクの使用や生演奏との融合、大道芸やダンスとのクロスオーバーも多く見られます。

さらに、近年ではプロジェクションマッピングやドローン演出など、テクノロジーを組み合わせたハイブリッド型のオープンエアパフォーマンスも登場しており、新しい表現地平が広がっています。



現代におけるオープンエアパフォーマンスの可能性と社会的意義

現代においてオープンエアパフォーマンスは、芸術表現における「公共空間の再定義」「コミュニティとの関係構築」「身体と空間の関係性の再考」など、多くの課題と可能性を内包しています。

コロナ禍以降、屋内施設に制限がかかる中で再注目された形式でもあり、安全性と文化活動の両立という点から、再び多くの芸術団体に採用されるようになりました。

特に以下のような社会的意義が挙げられます:

  • 芸術アクセスの拡大:チケットが不要な場合が多く、文化への入口を広げる役割を果たす。
  • 地域文化の活性化:地元住民とのコラボレーション、公園や観光地の活用による地域との共創。
  • 環境との調和:自然と共に生きる感覚を舞台に持ち込むことで、エコロジー的視点を表現に組み込むことが可能。

教育現場や市民劇団、地域イベントなどでも導入しやすく、舞台芸術の民主化を推進する手法としても注目されています。また、観客との物理的距離が近いため、即興性や対話的な演出も盛り込まれやすく、インタラクティブな表現の温床にもなっています。



まとめ

オープンエアパフォーマンスは、自然環境や都市空間と融合することで、新たな舞台芸術の形を生み出す革新的な表現形式です。

その歴史は古代から続き、現代ではコミュニティとの連携、社会的アクセスの向上、テクノロジーとの融合といった多面的な価値を持つようになりました。劇場という枠を超え、あらゆる場所を「舞台」へと変えるその自由さと可能性こそが、オープンエアパフォーマンスの最大の魅力と言えるでしょう。


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