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舞台・演劇におけるオンデマンドパフォーマンスとは?

美術の分野におけるオンデマンドパフォーマンス(おんでまんどぱふぉーまんす、On-demand Performance、Performance à la demande)は、演劇や舞台芸術における上演形態の一つであり、観客が自らのタイミングで映像作品として舞台作品を視聴できるサービスまたは形式を指します。これは、インターネット配信やデジタルストリーミング技術を活用し、実際の公演を録画・編集し、オンライン上で配信することを特徴としています。

従来、舞台芸術は「その場でしか体験できない一回限りのライブ体験」とされてきましたが、近年の技術進化とパンデミックによる社会的変化を背景に、こうした枠組みを超える新たな鑑賞スタイルとしてオンデマンドパフォーマンスが注目されています。

英語では「On-demand Performance」、フランス語では「Performance à la demande(ペルフォルマンス・ア・ラ・ドマンド)」と訳され、映像配信の文脈ではVOD(Video On Demand)の一環として扱われることもあります。

この形式により、物理的な距離や時間の制約を超えて、より多くの人々が舞台芸術に触れることが可能となりました。特に教育機関や地域文化施設では、アーカイブ作品としての利用や、舞台芸術教育の補完としての導入も進んでいます。



オンデマンドパフォーマンスの歴史と発展

「オンデマンドパフォーマンス」という概念が普及した背景には、2000年代以降のインターネット技術の進展があります。YouTubeやNetflixなどの動画配信サービスが登場したことで、個人が自由なタイミングで映像作品を視聴するという文化が一般化し、それが舞台芸術の領域にも波及したのです。

特に2020年以降、世界的な新型コロナウイルスの流行によって劇場公演が中止・延期される中、多くの劇団や劇場が収録済みの舞台をオンラインで配信する動きが加速しました。日本では新国立劇場やPARCO劇場などが「舞台の記録」をインターネット配信する試みを本格化させ、多くの観客に支持されました。

また、ドイツやフランス、イギリスでは、国立劇場がオンライン配信専用のプラットフォームを開設し、過去の名作や実験的な新作をアーカイブ公開するなど、文化政策の一環としても注目されるようになっています。

このように、オンデマンドパフォーマンスは元来「一過性」であった舞台芸術を「継続的なコンテンツ」として提供する仕組みとして、大きな変革をもたらしたのです。



現在の使われ方と展開

オンデマンドパフォーマンスは、現在次のような場面で活用されています。

  • 舞台公演の録画配信:劇場で行われた演劇・ダンス・オペラ・ミュージカルなどを高画質・多角的なカメラで収録し、編集後に配信。
  • 教育・研修用コンテンツ:演劇学科や演出家養成講座などで、過去の公演事例を教材として利用。
  • 海外展開のツール:字幕付きで海外に作品を届ける手段として、国際フェスティバル参加や配信プラットフォームの利用が進んでいる。
  • アーカイブ資料としての活用:劇団や公共劇場による文化資源の保存および活用。

また、ライブ配信(リアルタイムでの中継)とは異なり、視聴者は好きな時間に好きな場所で何度でも再生できるという利便性を持っています。これにより、舞台芸術の「空間性」と「時間性」が解体され、個人化された鑑賞体験が可能となった点が大きな特長です。

一方で、「劇場で観るライブ体験」とは異なるため、作品制作時にはカメラの配置や映像編集の技術、観客との一体感をいかに演出するかといった映像演出上の新たな課題も出てきました。



オンデマンドパフォーマンスの課題と未来

オンデマンド形式は利便性が高い反面、舞台芸術に本来的に備わっている「同時性」「一回性」「現場の熱気」といった要素を損なうおそれがあるとも指摘されています。

たとえば、観客と俳優の間に生じる無言のエネルギーの共有や、同じ空間で体験することによる共鳴的な感情の連鎖は、映像配信では得難いとされています。また、収録や配信に関わる著作権処理や出演者の肖像権管理も新たな課題として浮上しています。

しかしながら、オンデマンドパフォーマンスの可能性も大きく、以下のような展望が考えられています:

  • インタラクティブな視聴体験:視聴者がストーリーを選べる分岐型の舞台映像など。
  • 360度カメラ・VRによる没入型コンテンツ:劇場空間にいるかのようなリアリティの創出。
  • デジタル配信限定作品の制作:劇場未上演の企画を最初から配信用に演出する新ジャンル。

つまり、今後は「配信のための演劇作品」や「観客参加型オンライン演劇」など、オンデマンドという形式に最適化された新たな舞台芸術の創造が鍵となっていくでしょう。



まとめ

オンデマンドパフォーマンスは、舞台芸術の新たな提供形態として、観客のライフスタイルや技術環境に柔軟に対応する仕組みを実現しています。

その登場は、演劇やダンス、音楽劇の世界に新たな流通手段と表現の可能性をもたらしました。今後は、単なる記録映像にとどまらず、配信を前提とした演出手法や、国境を越えた文化交流の手段としても発展が期待されます。

舞台芸術の本質とデジタル技術が出会うこの潮流は、観る者と創る者の関係を再定義し、芸術の未来を形づくっていく重要なステップとなるでしょう。


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