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舞台・演劇におけるオンラインキャスティングとは?

美術の分野におけるオンラインキャスティング(おんらいんきゃすてぃんぐ、Online Casting、Casting en ligne)は、舞台・演劇において俳優や演出家、ダンサーなどの出演者を決定するためのオーディションや選考プロセスを、インターネットを介して実施する方法を指します。これには、エントリーの受付、プロフィールや映像資料の提出、さらにはリモートでの面談・演技審査までを含む包括的な仕組みが含まれます。

特に近年では、デジタル技術の進化とともに舞台芸術の現場でもオンライン化が進み、地域や国境を越えた人材発掘が可能となったことで、従来の対面型キャスティングと併用される場面が急増しています。英語では「Online Casting」、フランス語では「Casting en ligne(カスティング・アン・リーニュ)」と表現され、演劇・映像業界を問わずグローバルに定着しつつある用語です。

「オンラインキャスティング」は、制作側にとっては時間とコストの削減、出演希望者にとっては遠隔地からでも参加できる利便性を提供する手段として注目されています。また、パンデミック時代を経て定着したリモートワークの文脈とも親和性が高く、舞台・演劇における新たなキャスティング手法の一つとして広く導入され始めています。



オンラインキャスティングの歴史と発展

「オンラインキャスティング」という概念が本格的に舞台芸術分野に登場したのは、2000年代後半以降、インターネットと動画技術の普及が進んだタイミングでした。

もともと映画業界やテレビ業界では、遠隔地の俳優に自己紹介や台詞を収録した映像を送ってもらい審査を行う「ビデオ・オーディション」という形式が広がっていました。この手法が、舞台業界にも波及する形でオンラインキャスティングへと発展していったのです。

特にその導入を加速させたのは、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行でした。稽古場やオーディション会場での密接な接触を避ける必要から、ZoomやSkypeといったビデオ通話ツールを用いたオーディションが急速に普及しました。

これにより、地方在住の俳優、海外在住のパフォーマー、育児や仕事の都合で移動が難しい候補者にも等しく機会が開かれ、多様な才能がキャスティングの選択肢に加わるようになったのです。

今日では、映像審査プラットフォームやキャスティング専用サイト、さらには舞台芸術団体の独自のオンライン応募システムなども整備され、「オンラインキャスティング」は一般的な募集手段の一つとして確立されつつあります。



オンラインキャスティングの仕組みと流れ

オンラインキャスティングは、次のようなプロセスで行われます:

  • 公募・告知:劇団や制作団体がウェブサイトやSNSを通じて募集要項を告知。
  • エントリー受付:応募者は履歴書、出演歴、自己紹介文、写真、映像資料(ショーリールや自撮り演技動画など)をオンラインフォームから提出。
  • 書類・映像選考:制作陣が提出資料をもとに第一次選考を実施。
  • リモート面談・演技審査:通過者に対してZoomなどでのインタビューやリーディング(台本読み)を実施。
  • 決定・通知:配役決定後、出演契約に関する説明・書類もメールやオンラインでやり取り。

これにより、移動や宿泊の手配といった物理的コストを大幅に削減でき、選考にかかる時間も短縮されます。また、動画による審査は繰り返し確認できるため、より公平な評価が可能となる点もメリットとされています。

一方で、映像だけでは伝えきれないライブ感や舞台上での立ち姿、声量など、舞台特有の要素を判断するには限界もあり、最終選考では対面審査を取り入れるケースも多く見られます。



現代演劇における活用と展望

オンラインキャスティングの活用は、単なる選考手段の多様化を超えて、現代演劇の在り方そのものを変えつつあります。

まず、オンラインキャスティングは、舞台作品の国際共同制作や、地方公演を前提とした巡回劇団など、多地域からの人材確保が求められるプロジェクトにおいて、その威力を発揮しています。従来は現地に赴いて行っていたキャスティングが、ネット環境さえあれば遠隔で完結するため、地理的制約を超えた多様性のある配役が可能となりました。

また、演劇教育の現場においてもオンラインキャスティングは重要な役割を果たしています。学生や若手俳優にとって、プロの現場に挑戦する第一歩としての「映像応募」の経験が、自己PRの方法や表現力を磨く機会にもなっています。

さらに、キャスティングプラットフォームのAI活用が進んでおり、演者の演技データや履歴をもとに最適な配役をレコメンドするなど、テクノロジーと芸術の融合も注目されています。

将来的には、メタバース空間での舞台作品においてアバターの声優や動きのキャスティングをオンラインで行うといった、新たなパフォーマンス環境にも対応していくことが期待されます。



まとめ

オンラインキャスティングは、舞台・演劇における人材選考のデジタル化を象徴する新たな手法です。

技術の進化と社会環境の変化を背景に、今やその存在は一過性のトレンドではなく、演劇の未来をかたちづくる革新的な仕組みとして注目されています。

今後もオンラインキャスティングの技術的洗練と制度的整備が進むことで、より多くの才能にスポットライトが当たり、演劇表現の世界がさらに豊かになることが期待されます。


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