【オンラインリハーサルとは？】ビジプリ舞台・演劇用語辞典

オンラインリハーサルの歴史と導入背景

「オンラインリハーサル」という用語が広く認知されるようになったのは、2020年以降の世界的なパンデミックによる影響が大きな要因です。多くの劇場や稽古場が使用停止となる中、演劇制作者たちは新たな試みとして、インターネットを介したリモート稽古を模索しました。

この流れは、もともと技術的には存在していたオンライン会議システム（ZoomやSkypeなど）を活用したもので、当初は臨時措置的な意味合いが強くありました。しかし、各地に離れて住む俳優たちや、海外スタッフとの共同制作など、多様なニーズに応じるうちに、その有用性が再評価されていきました。

特に、国際的な演劇フェスティバルへの参加準備、地方公演のための事前稽古、声のみのリーディング公演、映像配信を目的とした収録型の舞台作品などでは、オンラインリハーサルが主流になる例も出てきています。

一方で、この新しい形態に対応するために、演出家や演者が求められるスキルにも変化がありました。映像越しに細かな指示を伝える工夫、音声遅延を踏まえたテンポ調整、カメラを通した表現技術など、従来の舞台芸術にはなかった新たな課題と可能性が共存するようになったのです。

オンラインリハーサルの構成と技術的要素

オンラインリハーサルを実施するには、いくつかの基本的な技術環境と運営手法が必要です。以下にその構成要素を紹介します。

• ビデオ通話ツール：Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなどが代表的。演者の動きが見えるようにカメラの配置や広角レンズを活用。
• 台本共有：GoogleドキュメントやPDF共有機能を利用して、参加者が同じ台本を確認可能に。
• タイムコード同期：録音や録画を行う場合、クラップボード（音響的な合図）などで同期を取る必要があります。
• 稽古録画の保存・活用：後日確認や自己分析のためにリハーサルの映像を保存しておくと有用。

これらの要素を組み合わせることで、演者と演出家の間で密なやり取りを保ちながら、距離を超えた演劇創作が可能となります。また、テクニカルリハーサル（いわゆる「場当たり」や「通し稽古」）も、バーチャル空間内でのレイアウトシミュレーションによって行うことが試みられています。

近年では、AR（拡張現実）技術や仮想舞台を組み合わせた「XRリハーサル」と呼ばれる形態も登場し、よりリアルに近い稽古体験の提供が可能となりつつあります。

オンラインリハーサルの利点と課題

オンラインリハーサルには以下のような明確な利点が存在します：

• 地理的制限の解消：海外在住の俳優やスタッフと共同で稽古が可能。
• 移動・交通費の削減：劇団や制作側のコスト軽減につながる。
• 柔軟なスケジューリング：空き時間を見つけやすく、稽古効率が向上。
• 録画による復習：演技のフィードバックや反省点の可視化に活用。

しかし、以下のような課題も少なくありません：

• 時差・通信環境の影響：遅延や音声の途切れによるテンポの乱れ。
• 身体表現の限界：動きや距離感、舞台空間の感覚が伝わりにくい。
• 感情の共有の難しさ：映像越しでは表情の繊細な変化が伝わりにくいことも。

こうした問題を解決するために、多くの団体では「オンライン＋対面」のハイブリッド稽古を導入しています。初期段階はオンラインで進め、作品の後半や本番直前には対面での実地稽古に切り替えるなど、柔軟な運用がなされています。

まとめ

オンラインリハーサルは、現代の舞台・演劇制作において欠かせない技術的手法となりつつあります。通信インフラの発達や演劇人の創意工夫によって、物理的制約を超えた芸術表現の実現が可能になりました。

完全な代替手段ではなくとも、今後の演劇制作において、オンラインリハーサルは補完的かつ戦略的なツールとして定着していくでしょう。特に、国際共同制作や教育現場、リーディング公演など、多様な場面でその有用性が広がっています。

舞台芸術の新たな可能性を切り開くこの手法は、今後もテクノロジーとともに進化し続け、表現の幅を拡張していくことが期待されています。