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舞台・演劇におけるカーテンコールとは?

美術の分野におけるカーテンコール(かーてんこーる、Curtain Call、Rappel au rideau)は、舞台公演の終了直後に、出演者が観客の拍手に応えて再び舞台に姿を現し、挨拶や感謝を表現する一連の演出行為を指します。演劇、オペラ、バレエ、ミュージカルなど多様な舞台芸術において広く見られる慣習であり、観客との交流や作品への共感を可視化する場ともいえます。

「カーテンコール」という語は、文字通り「幕(カーテン)を呼び戻す」という意味を持ち、舞台の幕が閉じた後に再び開かれることを象徴しています。英語では “Curtain Call”、フランス語では “Rappel” または “Rappel au rideau” と表現され、公演の終わりにおける出演者と観客の相互作用の頂点として、美術的・演劇的にも意味深い瞬間とされています。

この行為は、単なる挨拶にとどまらず、演者の表現に対する観客からの賞賛や、作品全体への共感、共鳴の証として機能します。また、舞台上での挨拶の形式や順序には、作品の構成や劇団の方針、文化的背景が色濃く反映されており、国やジャンルによって異なる様式が見られます。

特に近年では、オンライン配信を含むデジタル演劇においても「バーチャル・カーテンコール」などの形式が登場しており、カーテンコールの持つ意味と形態は新たな展開を見せています。



カーテンコールの歴史と語源

カーテンコールの起源は、18世紀から19世紀のヨーロッパにおける演劇文化にさかのぼると考えられています。初期の劇場では、観客が感動や称賛を表すために劇の終了後も拍手を続ける習慣があり、それに応えて出演者が再登場する形式が自然発生的に確立されたとされています。

「カーテン(幕)」が物理的に閉じられた後、観客の拍手によって幕が再び開き、演者が登場するこの演出は「Call(呼び戻し)」と表現され、やがて “Curtain Call” という定型語となりました。フランス語の “Rappel” も同様に「再登場」を意味します。

19世紀以降、この形式はヨーロッパ各地の劇場に普及し、やがて世界中の演劇文化へと広がっていきました。日本においても、明治時代以降の西洋演劇の導入とともに「カーテンコール」が一般化し、今日では歌舞伎や現代演劇においても幅広く用いられています。

特に20世紀後半からは、カーテンコールが単なる再登場ではなく、演出の一部として組み込まれることも増加し、演者の挨拶が作品のテーマ性や余韻をより深く印象づける手段となっています。



カーテンコールの構成と舞台演出における役割

カーテンコールの形態は舞台の種類、国、劇場の慣習によってさまざまですが、一般的には以下のようなステップで構成されます:

  • 個別の登場:主要キャストが順に舞台へ再登場し、一礼または拍手に応える。
  • 全員での挨拶:キャスト全体が一列に並んでお辞儀をし、観客に感謝を示す。
  • 演出家・スタッフの紹介:一部の舞台では、演出家や音楽家などのスタッフも登場する場合がある。
  • 再カーテンコール:観客の拍手が鳴り止まない場合、2度目・3度目の再登場が行われる。

このように、カーテンコールは舞台芸術における演者と観客の関係性を具現化する儀式ともいえる重要な要素です。また、舞台の余韻を引き延ばし、感情の波を穏やかに鎮める装置としても機能しています。

加えて、観客にとっては感動の共有を可視化し、出演者にとっては作品完成の達成感を実感する機会でもあります。観客がスタンディングオベーションを送ることで、より劇的な印象が残る演出となることも少なくありません。

一方、舞台側ではカーテンコールの所要時間や演出のトーンをあらかじめ計算に入れることもあり、演出全体の一部として設計されることも増えています。現代の大規模ミュージカルでは、楽曲のリプライズ(再演奏)やダンスの追加披露を含む特別な構成が取られることもあります。



現代におけるカーテンコールの多様化と課題

カーテンコールの形式は、演劇の多様化に伴って進化を続けています。以下は現代的な変化の例です:

  • バーチャルカーテンコール:オンライン公演やライブストリーミングにおいて、出演者のコメント動画やチャットでの観客交流を通じた「デジタル型」カーテンコールが定着しつつあります。
  • インクルーシブ演出:障がいを持つ出演者や多国籍のキャストが登場する舞台では、多言語・多様なジェスチャーによるカーテンコールが行われることも。
  • 政治的・社会的メッセージ:カーテンコールで作品のテーマに沿ったメッセージが読み上げられるケースもあり、舞台と現実の接点としての役割も増しています。

一方で、形式的に義務感から行われるカーテンコールについては、「感動が薄れる」「余韻を壊す」といった批判もあるため、その在り方は演出家や劇場側の配慮が求められる重要な局面となっています。

また、カーテンコールを「どこまで行うか」「いつ終了とみなすか」というタイミングの判断も重要です。スタンディングオベーションが続く中、幕を引くタイミングを見極めるのは、演出家のセンスと観客との阿吽の呼吸に依存する場面でもあります。



まとめ

カーテンコールは、舞台芸術における演者と観客をつなぐ重要な演出の一部であり、演劇の感動を共有・昇華させる場でもあります。

その歴史は西洋演劇文化に根ざしつつも、現代では多様な形態で進化し続けています。デジタル演劇の広がりや社会的テーマの反映など、カーテンコールは単なる挨拶にとどまらず、作品の「最後の一幕」として、新たな可能性を持った演出装置として再認識されています。

今後も演劇文化の発展とともに、その在り方は変化し続けるでしょう。しかし、観客と演者が感動を共有するこの瞬間の価値は、いつの時代においても変わらず尊いものとして受け継がれていくに違いありません。


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