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舞台・演劇におけるカンパニーシアターとは?

美術の分野におけるカンパニーシアター(かんぱにーしあたー、Company Theatre、Théâtre de Compagnie)は、俳優や演出家、スタッフなどが一定の芸術理念や創作哲学を共有しながら、継続的かつ集団的に作品制作を行う演劇の形態を指します。商業主義や一過性のプロジェクトとは異なり、固定メンバーによる集団創作と、長期的な活動を前提とする運営形態が特徴です。

この言葉の起源は英語の“company”に由来し、本来「仲間」「集団」を意味するこの語は、演劇の文脈においては特定の劇団・劇場カンパニーを指します。また、フランス語では“compagnie théâtrale”と呼ばれ、19世紀後半のヨーロッパ演劇運動の中で、国立劇場とは異なる市民的・創造的な拠点として発展してきました。

日本語における「劇団」と近い意味を持ちますが、「カンパニーシアター」はより国際的で現代的なニュアンスを帯びており、単なる組織ではなく、芸術的集団としての連帯意識や、独自のスタイルを持つ創作単位として捉えられます。現代演劇においては、社会的テーマに根ざした作品作りを行うカンパニー、即興性を重視するパフォーマンス集団、あるいはマルチジャンルにまたがる表現を展開するアーティスト集団など、多様な形で存在しています。

このようにカンパニーシアターは、芸術表現の現場において、単なる制作母体というだけでなく、作品と同様に「ひとつの表現」であるとも位置づけられます。



カンパニーシアターの歴史と発展

カンパニーシアターという概念の始まりは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパ演劇運動にさかのぼります。特に、ロシアのコンスタンチン・スタニスラフスキーによって創設されたモスクワ芸術座(Moscow Art Theatre)は、劇団メンバーが長期的に演劇を共に創作するという革新的な試みを世界に示しました。

その後、20世紀の演劇改革期において、ベルトルト・ブレヒトのベルリナー・アンサンブル、ジャン・ヴィラールの国民劇場(TNP)、イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)など、カンパニー制を採用する劇団が次々と現れました。これらの団体は、特定の芸術哲学や政治的ビジョンに基づいた創作活動を行うことで、観客との深い対話を可能にしました。

日本においても、戦後の新劇運動を中心に「劇団」という形でカンパニー的な活動が行われてきました。さらに1990年代以降の小劇場演劇の隆盛とともに、演出家主導型のユニットやコレクティブによる自由なカンパニーシアターの形態が広がりを見せています。



カンパニーシアターの運営と創作の特徴

現代のカンパニーシアターは、そのスタイルや運営形態において多様性を見せていますが、以下のような特徴が共通しています。

1. 長期的なメンバーシップ

俳優や演出家、技術スタッフが固定的に所属し、長年にわたって同じメンバーで創作を続けることが多いです。この関係性は信頼を土台とした創作の深まりを可能にし、一貫した演劇スタイルの確立にもつながります。

2. 共同創作のプロセス

脚本家の戯曲に基づく古典的演劇だけでなく、即興やワークショップを通じた台本づくり、演出家と俳優の対話的プロセスによる「集団創作」が多く見られます。

3. 社会性やメッセージ性の強さ

カンパニーシアターは、単なるエンタメではなく、社会問題や政治的な問いをテーマにすることが多く、地域との関係性や文化的背景を重視する傾向があります。

4. 自主運営による柔軟な活動

多くのカンパニーは、劇場付きではなく、ツアーや地域公演、学校訪問などの形式で活動を展開します。資金調達や制作、広報を含めたセルフマネジメント型の運営が一般的です。

5. 国際的な協働

近年は、国際共同制作やアーティスト・イン・レジデンスを通じたグローバルなネットワークづくりにも積極的であり、国境を越えた表現活動が活発です。



代表的なカンパニーとその意義

世界には数多くの著名なカンパニーシアターが存在し、それぞれが独自のスタイルと表現を発展させてきました。以下にいくつかの代表例を紹介します。

● ピーター・ブルック率いるインターナショナル・センター・フォー・シアター・リサーチ(CIRT)
異文化との対話を通じて演劇の普遍性を探るカンパニーで、世界中の俳優が集まり、多言語・多文化の作品を創作しています。

● シディ・ラルビ・シェルカウイのイーストマン
ダンスと演劇の境界を超えた身体表現により、社会的・精神的テーマを探求するコンテンポラリーカンパニーです。

● 日本の青年団(主宰:平田オリザ)
日常会話を中心とした「現代口語演劇」により、演劇と社会の接点を探る作品を継続的に発表。演劇教育や地方創生にも取り組む。

● マームとジプシー
藤田貴大を中心に、詩的なリズムと繰り返しの構成を用いた独特の表現世界を持つカンパニーで、演劇の言語の可能性を探求しています。

このように、カンパニーシアターはその表現スタイルだけでなく、創作過程そのものが作品の一部として評価されることも少なくありません。観客は、単なる作品を見るのではなく、カンパニーという「集合体」の表現行為全体を体験することになるのです。



まとめ

カンパニーシアターは、個人ではなく集団によって生み出される演劇形式であり、その中には理念、哲学、対話が込められています。

長期的な創作関係を土台に、社会的メッセージ性の強い作品を生み出すその在り方は、単なる舞台制作の枠を超え、文化活動や市民活動の一環としても機能しています。

これからの時代、表現がより多様性と包摂性を求められる中で、カンパニーシアターの在り方は演劇の未来像を映し出す重要な鏡となるでしょう。


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