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舞台・演劇におけるキャッチコピーとは?

美術の分野におけるキャッチコピー(きゃっちこぴー、Catch Copy、Slogan publicitaire)は、舞台や演劇作品において、作品の内容や魅力、世界観を短く印象的な言葉で表現し、観客に強く訴求するために用いられる宣伝用の文句です。もともとは広告・マーケティングの分野で発展してきた概念ですが、演劇の世界においても公演チラシ、ポスター、特設サイト、SNS、動画トレーラーなどで活用され、観客の興味を引く「作品の顔」として機能しています。

英語では「Catch Copy」や「Tagline」、フランス語では「slogan publicitaire(スローガン・ピュブリシテール)」や「accroche(アクロシュ)」などの表現が使われます。これらは共通して「心をつかむ言葉」という意味合いを持ち、作品の持つ感情的・思想的な魅力を一文で提示する技法です。

舞台芸術においてのキャッチコピーは、単なる広告文句にとどまらず、演出意図や作家の思想を内包する言語芸術の一部として位置づけられることもあります。例えば、観客がそのコピーに込められた意味を舞台上で発見することで、作品体験の深さが増すことも珍しくありません。

近年では、SNSでの拡散性を意識した短文型キャッチコピーや、詩的・哲学的な余韻を持たせたコピーが好まれる傾向にあります。また、演劇特有の表現として、舞台の台詞や劇中歌の一節をそのままキャッチコピーとして用いる手法も一般的です。



キャッチコピーの起源と演劇界への応用

キャッチコピーという言葉は20世紀初頭のアメリカにおける広告業界で広く使われるようになったもので、当初は新聞広告の見出し文句や商品のセールスポイントを端的に表す短文として発展しました。これが日本に輸入されたのは大正から昭和初期にかけてであり、ポスターや雑誌広告において使用されるようになります。

演劇の世界でこの表現技法が積極的に取り入れられるようになったのは、1970年代の商業演劇の発展とともに、広告や宣伝活動が演劇制作の一部として組み込まれるようになった時期からです。とりわけ蜷川幸雄や唐十郎といった演出家が率いた演劇公演では、舞台そのものと同じくらい、チラシやポスターに記されたキャッチコピーが強い印象を与える要素となりました。

たとえば、1970年代のアングラ演劇では、コピーが過激で挑発的な文体を用いて観客に衝撃を与える「武器」として使われた例もありました。反対に、文学性の高い新劇では詩的なフレーズを用い、観客の思索を誘うような構成が特徴的でした。

このように、キャッチコピーの言語的表現力と演劇表現の融合は、単なる宣伝の枠を超えて演劇芸術の一端を担う重要な装置として成熟してきたのです。



舞台・演劇におけるキャッチコピーの役割

演劇においてキャッチコピーが果たす役割は多岐にわたります。単に観客を集客するための手段ではなく、作品世界の「窓」としての機能があることが特徴です。

1. 世界観の提示
たった一文で作品の世界観やジャンル、テーマを示す役割を果たします。たとえば「ここは、最後の夜を迎える場所。」というコピーであれば、観客はそれだけで終末的な物語や重厚な人間ドラマを予想するでしょう。

2. 感情への訴求
観客の心を揺さぶる感情的な文言がコピーに込められていることもあります。例えば「生きるとは、誰かの物語を演じ続けること。」といった言葉には、人生と演劇の境界を曖昧にし、哲学的な興味を引き起こす効果があります。

3. 記憶に残る印象
良質なキャッチコピーは、作品の記憶と強く結びつき、観客の心に残り続けます。そのため、口コミやリピーターの促進にもつながります。

4. SNS時代の拡散性
短く印象的なキャッチコピーは、SNSでの拡散力が高く、情報の共有や拡散において強力なツールとして活用されます。劇団の公式アカウントや観客自身による投稿を通じて、新たな層への訴求が可能になります。

これらの役割を果たすため、演劇におけるキャッチコピー制作は、演出家・脚本家・広報担当者が密接に連携して検討されることが一般的です。



キャッチコピーの制作プロセスと事例

舞台作品におけるキャッチコピーは、作品制作の初期段階から検討される場合と、公演告知の直前に決定される場合があります。制作プロセスの一例を以下に示します。

1. コンセプトの明確化
まずは演出家や脚本家によって、作品の主題、登場人物の関係性、物語の構造などが言語化されます。これがコピー制作の核となる「訴求軸」となります。

2. コピーライターによる草案
広報チームまたは外部のコピーライターが、訴求軸をもとに複数の案を作成します。文学的、ユーモラス、ショッキングなど、トーンの違うバリエーションが提示されます。

3. 関係者による絞り込み
演出家・プロデューサー・宣伝担当者が案を検討し、必要に応じて修正。作品ポスターや映像、ビジュアル全体との整合性を考慮して決定されます。

代表的な事例

作品名キャッチコピー
『髑髏城の七人』(劇団☆新感線)この世には、守るべきものがある。
『NODA・MAP Q』ここは、最も静かな戦場。
『レ・ミゼラブル』(日本版)人は愛によって生き、自由のために戦う。

これらの例に共通するのは、物語の中核的な感情やテーマを一文に凝縮しているという点です。



まとめ

キャッチコピーは、舞台芸術において作品の魅力を一文に凝縮して伝える最強の言葉です。

単なる宣伝文句ではなく、物語の核心や演出家の思想を内包し、観客との出会いを導く「言葉の演出装置」として、今後ますます重要性を増すでしょう。公演チラシの一角に記されたその言葉が、観客の心を動かし、劇場へと足を運ばせる。その瞬間から、演劇はすでに始まっているのです。


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