ビジプリ > 舞台・演劇用語辞典 > 【グリーンルーム】

演劇におけるグリーンルームとは?

美術の分野におけるグリーンルーム(ぐりーんるーむ、Green Room、Salon Vert)は、舞台や演劇の上演施設において、出演者が舞台に出る前や出演後に待機・休憩するための控室を指す用語です。一般には「楽屋(がくや)」とも呼ばれますが、グリーンルームは特に共用のリラックススペースや準備スペースとして設けられた部屋を指し、個室の楽屋とは用途がやや異なる場合があります。

グリーンルームは、俳優や演奏者、パフォーマーたちが本番前に精神を整えたり、出演後に休息したりするための場として重要な役割を担っています。室内にはソファやテーブル、鏡、軽食・飲料のサービスが設置されていることが一般的で、リハーサルの合間や舞台転換の待機中などに、出演者同士が交流を深める場としても機能します。

英語表記は “Green Room”、フランス語では “Salon Vert(サロン・ヴェール)” と呼ばれます。なぜ「グリーン(緑)」なのかについては諸説ありますが、いずれにしてもこの呼称は17世紀頃からヨーロッパの劇場で使われ始めた伝統的なものであり、今日では演劇・舞台芸術に限らず、テレビ・映画・音楽業界でも広く用いられています。

グリーンルームは単なる物理的なスペースにとどまらず、演者の集中力を高め、精神的な安定をもたらす役割を果たす「裏方の重要拠点」として、舞台制作の現場では欠かせない存在となっています。出演者同士の信頼関係を築く場であり、創作のインスピレーションが生まれることもある「静かなる舞台裏の舞台」と言えるでしょう。

そのような文化的・機能的意義から、グリーンルームは演劇における舞台裏の象徴的な用語として、広く定着しています。



グリーンルームの起源と歴史

「グリーンルーム」という言葉の起源にはいくつかの説がありますが、最も有力な説の一つは17世紀イギリスの劇場文化に由来するというものです。当時、舞台照明は自然光に頼っていたため、舞台裏に設けられた控室の壁が目に優しい緑色で塗られていたことから「グリーンルーム」と呼ばれるようになったと考えられています。

また、別の説では、グリーンルームは出演者の興奮を落ち着けるために緑色のカーテンや家具を使用していたことに由来するとされ、「グリーン」には心理的にリラックス効果があるという観点からその色が選ばれたとも言われています。

さらに歴史的には、イギリスのロンドンにある有名な劇場「グローブ座」などでも、舞台袖とは別に「グリーンルーム」と呼ばれる専用スペースが存在していた記録があり、17世紀末までにはこの用語が一般化していたと考えられます。

フランスでは「Salon Vert(サロン・ヴェール)」という表現が用いられ、上流階級の劇場文化においては舞台裏のサロン的空間として、貴族や俳優が交流を深める場ともなっていました。特に19世紀以降、劇場建築が近代化されるとともに、グリーンルームも舞台装置の一部として設備が整えられていきました。



現代におけるグリーンルームの機能と役割

現代の劇場や放送施設において、グリーンルームは多機能な待機スペースとして設計されており、その役割は非常に多岐にわたります。基本的には、出演者が本番前後にリラックスしたり、衣装やメイクの確認を行ったりする場所として使用されます。

演劇だけでなく、テレビや映画のスタジオ、音楽ライブの舞台裏などでも用いられており、出演者・スタッフ・演出家が集う交流の場としての側面もあります。しばしば、共演者との打ち合わせや最後のセリフ確認、演出上の最終確認などが行われることもあります。

施設によってはグリーンルームが非常に豪華に整備されている場合もあり、ソファや大型モニター、簡易キッチン、バックステージモニターなどが設置されていることもあります。一方で、小劇場や仮設舞台では、簡素な控室に「グリーンルーム」と名づけられている場合もあります。

また、近年ではデジタル技術の進化により、グリーンルームにタブレット端末や音響機器が備えられ、個々の俳優がリアルタイムで舞台の進行状況を確認できるようになっているケースも増えています。これにより、より正確なタイミングでの出番調整が可能となり、舞台運営の精度向上に寄与しています。



文化的・象徴的な意味合い

グリーンルームは単なる実用的な空間以上に、舞台芸術の裏側に存在する「もう一つの舞台」として、演者や観客にとって重要な文化的象徴でもあります。そこには、公演前の緊張と集中、終演後の達成感と安堵、仲間との絆といった、人間的な感情と交流が濃密に詰まっています。

舞台裏での雑談や、励まし合い、演目への真摯な取り組み、時には静かな黙考の時間が、俳優たちの演技に深みを与える土台となっています。特に長期間にわたる公演では、グリーンルームが「共同生活の場」として機能することもあり、チームワークの形成にも大きく貢献します。

演劇教育の現場でも、グリーンルームの存在は重要視されており、学生たちはこの空間を通じて「舞台に立つとはどういうことか」「演技とは単なる表現以上のものだ」という意識を体感していきます。

このように、グリーンルームは物理的な空間でありながら、演劇という総合芸術の精神性と実践性を支える重要な要素として、舞台文化に深く根づいているのです。



まとめ

グリーンルームは、舞台芸術における精神的・技術的両面を支える裏方の要として存在しています。

その名称の由来は諸説ありますが、いずれにせよこの空間が担ってきた役割は時代を超えて普遍的であり、俳優たちが安心して演技に臨める環境の整備には欠かせない要素です。

今後もテクノロジーの発展や舞台表現の多様化に伴い、グリーンルームの役割は変化していく可能性がありますが、舞台芸術が人間の感情と交流を伝えるものである限り、グリーンルームという「心の準備室」の価値は決して色あせることはないでしょう。

▶舞台・演劇用語辞典TOPへ戻る



↑ページの上部へ戻る

ビジプリの印刷商品

ビジプリの関連サービス