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演劇におけるクリエイティブキャスティングとは?

美術の分野におけるクリエイティブキャスティング(くりえいてぃぶきゃすてぃんぐ、Creative Casting、Casting Creatif)は、舞台芸術や演劇制作のプロセスにおいて、従来の「配役選考(キャスティング)」という枠組みを超えた、新しい人材選定手法の一つです。単なる外見や演技力による配役選定ではなく、演出家や脚本家の創作意図と候補者の表現力・創造性との相互作用を重視し、作品世界を構築する「共創者」としての視点で俳優を選出するアプローチを指します。

この手法では、配役をあらかじめ決定してからオーディションを行うのではなく、創作の初期段階から俳優を交え、配役自体を柔軟に変化させるケースも多く見られます。そのため、オーディションは一方向的な評価の場ではなく、演出家・俳優・制作陣が共に作品の方向性を模索する創作の第一歩として位置づけられます。

クリエイティブキャスティングは特に現代演劇や実験的な舞台作品で活用されており、ジェンダーや年齢、国籍などにとらわれない多様なキャスティングが実現されることで、よりダイナミックで革新的な舞台芸術の創出が可能となっています。

また、映画やCMなどの映像分野にも応用されることがあり、「演技者の可能性を最大限に引き出す選考手法」として、世界中の芸術現場で注目されています。



クリエイティブキャスティングの起源と発展

クリエイティブキャスティングの考え方は、20世紀後半における演劇の現代化と密接に関係しています。特に1960?70年代に隆盛した実験演劇や身体表現主義の流れの中で、俳優と演出家の境界が曖昧になるような創作方法が台頭しました。

ヨーロッパではピーター・ブルックやイェジー・グロトフスキ、アリアーヌ・ムヌーシュキンらがこうした手法を積極的に取り入れ、俳優の身体性や即興力に応じて配役や物語の構成自体を変化させる取り組みを行いました。これは「役に合った人を探す」のではなく、「人に合った役を創る」という考え方に基づいています。

日本においても1990年代以降、小劇場を中心にこの手法が広がり始め、脚本を持たない状態から集団創作を行い、キャストの特徴や提案を基に役柄や物語を構築する演出が増加しています。



クリエイティブキャスティングの特徴と手法

クリエイティブキャスティングの最大の特徴は、固定された役柄やキャラクター設定が存在しない、もしくは非常に流動的である点です。

この形式では、以下のような特徴的なプロセスが採用されます:

  • 共同創作的オーディション:演出家がワークショップ形式で候補者とセッションを行い、その場で生まれる表現から配役の可能性を探る。
  • 配役の柔軟性:年齢、性別、人種などの固定観念にとらわれない自由なキャスティング。
  • 作品の変化:俳優の特性に応じて脚本や演出を柔軟に変更する。
  • 役と個の融合:配役に俳優自身のパーソナリティが溶け込むように設定されることも多い。

このようなアプローチにより、従来のオーディションでは発掘されなかった才能が開花するケースも多く、新しい創造性の扉が開かれるといわれています。



現代演劇とクリエイティブキャスティングの融合

現代演劇は、物語の一貫性や構成美だけでなく、多様な価値観の共存を表現する場として進化を遂げています。

クリエイティブキャスティングはその流れに呼応し、単なる「配役」ではなく「舞台芸術の創作戦略」としての側面を強めています。

また、ポストドラマ演劇やインタラクティブ・シアターのように、俳優が観客や空間と即興的に関わることが求められる演出形式では、最初から「創作性の高い表現者」を選定する必要があり、この手法の有用性が顕著に表れています。

映像業界においても、人物像が固定されがちな商業作品の枠を超えて、独立系映画やドキュメンタリードラマにおいてこの概念が採用されるケースが増加中です。



まとめ

クリエイティブキャスティングは、舞台・演劇制作において、俳優を「適材」としてではなく「共創者」として迎え入れる柔軟かつ創造的なキャスティング手法です。

この考え方は、固定観念を排除し、表現の可能性を最大限に引き出すことで、演劇そのものをより自由で多様な芸術に導く重要な鍵となっています。

今後、ジェンダー表現、マイノリティの登用、多文化共生をめざす舞台づくりが加速する中で、クリエイティブキャスティングはその中心的な役割を果たしていくことでしょう。

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