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演劇におけるセカンダリーライティングとは?

美術の分野におけるセカンダリーライティング(せかんだりーらいてぃんぐ、Secondary Lighting、Eclairage secondaire)とは、舞台照明において主照明(プライマリーライティング)とは異なる補助的・装飾的な光源を活用し、空間の雰囲気や演出の深みを演出する照明手法のことを指します。

この用語は、照明デザインの中での役割を明確に分類するために用いられ、舞台芸術においては非常に重要な役割を担っています。たとえば、主役を照らすキーライトの影を柔らかくするフィルライト、背景の明るさを調整するバックライト、または床や壁面を染めるカラーライティングなどがこれに該当します。

舞台演出では、視覚的なリアリズムと心理的な印象を共存させるために、セカンダリーライティングの技法が頻繁に活用されます。それにより、観客の視線誘導やシーンの切り替え、登場人物の感情の変化を効果的に表現できるのです。

英語で“Secondary Lighting”、フランス語で“Eclairage secondaire”と訳されるこの言葉は、特に照明設計者(ライティングデザイナー)と舞台監督の連携において重要な概念として浸透しており、プロフェッショナルな舞台照明の構築には欠かせない要素とされています。



セカンダリーライティングの歴史と由来

セカンダリーライティングという考え方は、19世紀末から20世紀初頭にかけての舞台照明の電化とともに進化しました。ガス灯から電灯への移行により、演出家や照明家は複数の光源を操作できるようになり、「主照明」と「補助照明」の役割分担が明確にされていきました。

この頃から照明設計の中で、単なる“明るさの確保”ではなく、感情・空気感・視覚的構図をつくるための光の使い分けが意識されるようになりました。その中で、補助的な役割を持つ照明がセカンダリーライティングとして分類されるようになり、今日の舞台照明技術の基盤を形作っています。

また、映画やテレビの撮影現場でも同様の概念が用いられており、舞台照明と映像照明の双方において、この言葉が共通言語として通用しています。



セカンダリーライティングの種類と舞台演出での役割

舞台照明におけるセカンダリーライティングは、主に以下のような役割を担います。

  • 視線の誘導:主役や小道具へ視線を集中させるための周囲の減光や明暗差の演出
  • 奥行きの演出:舞台の立体感を高めるための背景や側面からのライト
  • 雰囲気作り:天候・時間帯・感情などを表すカラーフィルターを使った間接照明
  • 影のコントロール:影の強調や緩和を行い、表情や動作の明確化を支援

例えば、月夜のシーンでは主役にスポットライトを当てつつ、青白いセカンダリーライトで舞台全体を照らすことで幻想的な夜の情景を作り出すことができます。

また、照明演出の複雑化に伴い、セカンダリーライティングはプリセットメモリ制御やDMX信号を活用したプログラム照明と組み合わされ、演出の瞬間的変化にも対応しています。これにより、演者の動きや音響と連動した高度な演出が可能になります。



セカンダリーライティングの課題と未来展望

セカンダリーライティングは高度な技術と計画性が求められる分野であり、いくつかの課題も存在します。

まず、光源同士の干渉です。プライマリーとセカンダリーの照明が干渉すると、逆効果となることがあり、色温度や配置のバランスを慎重に設計する必要があります。

また、予算や時間の制限がある小規模な劇場では、照明設備の不足によりセカンダリーライティングが十分に活用されないケースもあります。このような場合でも、限られた機材であっても工夫次第で効果的な演出が可能です。

近年ではLEDやムービングライトの進化により、省電力かつ多機能な照明器具が増え、セカンダリーライティングの自由度が大きく向上しています。また、AIやセンシング技術の導入により、演者の動きや観客の反応に応じて照明を動的に変化させる「スマートライティング」も実現しつつあります。

今後は、セカンダリーライティングをデザイン段階から総合演出の一部として組み込み、照明が“演技の一部”となる舞台表現の深化がさらに進むことが期待されます。



まとめ

セカンダリーライティングは、舞台・演劇における視覚演出の質を高める補助的な照明技法であり、主照明とは異なる役割でシーンの空気や感情、奥行きを構築するために欠かせない要素です。

その技術的な進化とともに、演出家や照明家にとってますます創造性を発揮できる領域となっており、今後の舞台芸術の表現力を支える重要な柱となっていくでしょう。

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